2日目:なぜ巨費でも米国へ?「臓器移植」日本で進まぬ訳
3日目:割り切れる?「脳死→臓器提供」決断した家族の本音
5日目:iPS細胞を駆使、実用化は近い?再生医療の最前線
2019年7月、櫻井敏範さんは妻の劉薇(りゅううぇい)さんに腎臓を1つ提供した。このとき櫻井さんは67歳、妻は56歳。結婚16年目だった。
8キロ減量して妻に腎臓を提供
ドナー(臓器提供者)になるための道のりは平坦ではなかった。「妻に腎臓を提供したい」と希望する櫻井さんに医師が提示した条件は、「7キロ以上の減量」。櫻井さんは、30年以上平均体重を上回っており、血圧や血糖値も生体腎移植が可能な基準値を大きく超えていた。
移植医療は、ドナーによる無償の提供があってはじめて成り立つ医療だ。術後に生涯、末期腎不全にならない可能性が高いと予測できる健康状態にある人でないと、生体腎ドナーにはなれない。
しかしそれ以前に、櫻井さんが「腎臓をもらってほしい」と申し出ても、「夫を自分の病に巻き込みたくない」と、妻は首を縦に振らなかった。
症状が出たとき、妻は末期状態だった。
「背中の下のほうが痛む」。妻が櫻井さんに最初に訴えたのは、2004年のことだった。慌てて病院にかかると間質性腎炎という病気で、「このままいけば、あと2〜3年で人工透析が必要になる」と医師に宣告された。一般的に腎臓の機能が10%を切ったら、人工透析をしなくてはならないとされている。このとき妻の腎機能は8%だった。
ところが、妻は透析も腎移植も拒否。雑穀を中心とする薬膳食で食事療法を行い、10年間、薬も飲まずに腎機能を維持した。そんな妻の健康状態が悪化し、腎機能の低下により、尿中に排泄されるはずの老廃物などが血液中にたまる尿毒症の症状が出始めたのが2018年の春。12月に通院を開始し、週3回・1回4時間の透析を受けることとなった。
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