コーヒーを「ブラック」で飲む人が知らない"真実" 酸味を嫌う日本人が多いのには実は深い経緯が…
── アラビカは華やかで、ロブスタは力強いんですね。実の収穫から生豆になるまでの工程も知りたいです。
上野:コーヒーチェリーは、緑色から赤色に変わったら完熟(イエローブルボン品種などは黄色で完熟)。そこから手作業で完熟したものだけを選別して収穫します。ちなみにコーヒーチェリーから出る果汁の糖度が高ければ、美味しいコーヒーになると言われています。
収穫後は、24時間以内に種を取り出して天日干しします。コーヒーチェリーには果肉がほとんどなく、中心にペクチンというプルンとした物質に包まれた種が2つ向い合って入っています。ペクチンは甘みがあるので、天日干しをして種に甘みや美味しさを染み込ませる方法で生豆を完成させるなど、いくつかの精製方法があります。ここまではすべて原産国で行っています。
コーヒーは、土地によって味が変わる
── 世界には様々な銘柄が存在していますが、アラビカとロブスタを色々な土地で育てることで、味が変わるということですか?
上野:そうですね。栽培品種やテロワール、生産方法など諸条件が積み重なって一つの銘柄になります。エチオピア、インド、ニカラグア、ブラジル、ペルーなど、原産国や地区ごとに味が変わってきますし、土地ごとに適する品種も異なります。
よく聞く「特定銘柄コーヒー」は、生産国や地域、コーヒー種などが定義されたコーヒーのことで、現在14種あります。
代表的なものでは、ジャマイカのブルーマウンテン地区で生産された「ブルーマウンテン」、タンザニアで生産されたアラビカ種の「キリマンジャロ」、インドネシアのスラウェシ島カロシ地区で生産されたアラビカ種「トラジャ」、イエメンで生産されたアラビカ種「モカマタリ」などがあります。
── ワインでいう、フランスのボルドー地区やブルゴーニュ地区のようなイメージですね。
上野:まさにそうだと思います。こうした特定銘柄コーヒーは、その土地、テロワールならではのコーヒーの味わいをダイレクトに味わえます。でも、それらをすべて覚えるのは大変だと思いますので、まずはブラジル(南米)、インドネシア(アジア)、エチオピア(アフリカ)という3つの原産国から抑えてみてください。ブラジルは酸味、苦味、コクのバランスが取れた味わいで、インドネシアは個性的。エチオピアは華やかな香りときれいな酸味が味わえます。
まずはシングルオリジン(単一原産国)から楽しんで、いろいろな原産国の味を知っていくところから始めてみるとよいかと思います。これを覚えておけば、「コスタリカとブラジルのフレンド」と言われた時に味のイメージができるようになってくるはずです。