「海の危機」に立ち向かう42歳海苔漁師の生き様 毎年100万円使って開く「海と海苔の勉強会」

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宮城県東松島の海苔漁師、相澤太さん(筆者撮影)
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秩父のメープルシロップや「畑の味」がするワイン、東京生まれのシェーブルチーズなどおいしさだけではない日本の「食」のポテンシャルを描いた『稀食満面 そこにしかない「食の可能性」を巡る旅』。この書籍から、全国を自腹で巡って海の環境の変化を訴える海苔漁師、相澤太さんの原稿を一部抜粋・再構成してお届けする。

「気づいた人がやらなきゃいけない役目」とは?

近年、日本近海の海でよからぬ事態が起きているようだ。試しに、「不漁」と検索してほしい。サケ、サンマ、イカ、タコ、カツオ、岩ガキなどが不漁というニュースがどんどん出てくる。しかも、「記録的」「深刻」「今年も」という言葉が並ぶ。

海になにが起きているのだろう? 日本近海の不漁の要因として、水産庁のホームページには「海水温や海流などの海洋環境の変化、外国漁船による漁獲の影響を含む様々な要因が考えられます」と解説されている。どれも自分たちでコントロールできることじゃないから、不漁を伝える記事に記される漁師の嘆きは切実だ。

――このまま、手をこまねいているわけにはいかない。現場を知る人間だからこそ、伝えられることがある。伝えることで、変えられることがある。今ならまだ間に合う。そう使命感を抱いて全国を巡っている男がいる。宮城県東松島の海苔漁師、相澤太さん(42歳)だ。

実は、日本の海苔も危機的状況にある。1998年には100億枚以上あった生産枚数が、2020年には65億枚を下回った。海苔の養殖に携わる経営体は2000年に7748軒あったが、2021年には約3000軒に激減している。

相澤さんによると、日本では毎年100億枚の海苔が消費されていて(コンビニのおにぎりなど)、不足している35億枚は中国、韓国からの輸入に頼っているのが現状だ。なぜ、ニーズがあるのに海苔漁師が減っているのか? 

「一番の理由は環境ですね。海に栄養がなくて、海苔が作れないんです。海苔の色落ちと言って、海に栄養がないと海苔が黄ばんじゃうんですよ。成長した海苔を魚が食べてしまう食害も起きています。海に魚の食べ物がないから」

相澤さんの話を聞いて調べてみると、海苔の名産地として知られ、国産海苔の40%を生産する佐賀の有明海をはじめ、海苔の養殖をしている各地で不漁が伝えられていた。主な原因として、窒素やリンといった栄養素の不足、海水温の上昇による赤潮の発生、本来なら貝やカニを食べるクロダイによる食害が挙げられている。

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