ティッシュなどの必要品を家庭から持ってこさせる園があることが問題になったときも、その経費は運営費として園に支給されているので家庭から徴収してはいけないという見解が出されていました。
その後、2015年実施の「子ども・子育て支援新制度」の検討段階で、幼保一体化が大きなテーマになり、利用者負担についても熱い議論が交わされました(当時、筆者は検討チームの構成員でした)。
保育料も各園で設定し、入園金や諸費用を別途徴収することが当たり前の私立幼稚園と、所得に応じた保育料(応能負担)を市町村が設定・徴収し、別途徴収には制約がある保育園。
保育園の保育料が応能負担になっているのは、家庭の経済状態にかかわらずすべての必要とする子どもが利用できるようにという、子どもの福祉を優先する制度設計によるものです。別途徴収が大きくなると、その意味が失われてしまいます。
歴史や文化が異なる幼保の制度を同じレールに乗せるためには、子どもを中心に置いた理念が必要でしたが、議論は紛糾しました。
国が示すルールの曖昧さ
結局、完全な幼保一体化は見送られましたが、2015年度から認可保育園・認定こども園・幼稚園(私学助成を受けない園のみが参加)が「新制度」のもとにまとめられ、保育料・別途徴収については共通の決まりが設けられました。
保育料は自治体が設定する額での応能負担となり、別途徴収は「上乗せ徴収」「実費徴収」として条件付きで認める制度になりました。
■内閣府の自治体FAQに示されている別途徴収のルール(要約)
このルールはかなり曖昧です。金額の上限はありません。保護者の同意はどこまで細かく必要か、私立保育園の上乗せ徴収への承認は何を基準とするのかなどの指標もありません。
そのため市町村の対応は現在もバラバラです。内閣府令(平成26年内閣府令第39号)には、上乗せ徴収も実費徴収も、徴収する理由や金額、使い道について、あらかじめ保護者に書面で明らかにするように規定されていますが、そんな基本的なことさえいい加減になっている園があって保護者が訴えても、市町村は「民間さんだから口出しできない」と言って取り合わないケースがあります。
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