すると、対象とするものが「相手の反応」ではなく、「自分が好きなことをうまく話せるか」になりますから、ハードルが下がって、うまくいくのです。
このように考えるためには、『Chatter(チャッター)』に書かれている内容を、いかに実際の自分の仕事において具体的に適用させていくかを考えることも大事ですね。
「役割性格」を作って自分を客観視する
「役割性格」を身に付けることも大事だと考えています。
人にはオリジナルの性格がありますが、大人になるにつれて成熟し、子どもの頃よりも、自分のことがよくわかるようになります。
子どもの頃は、些細なことでイライラしたり、すぐカッとなったりします。すぐに友達を突き飛ばしてしまう幼児に、「だめだ」と教えても、同じことをくり返すことがありますが、それは、本人が「カッとなる自分」に気づいていないからです。
しかし、年齢を重ねると、「自分はこういうことが起きるとイライラするな」「こんな行動に出がちだな」という傾向に気づき、コントロールできるようになります。そこで作るとよいのが、役割性格です。
チームや組織のなかで、役職とは別の「こういう人がいたら、全体がうまくいくだろうな」と思う役割を、自分のなかに作るのです。
今の自分から背伸びしてもいいでしょう。「未来にはこんな自分になれたらいいな」という役割性格を作ると、今の自分を客観的に見ることができます。
今はまだそうなれていなくても、職場での自分は、「ありたい自分」に近づいていこうと思えるわけです。
北京五輪の銀メダリスト、ロコ・ソラーレの吉田夕梨花選手も、「カーリング選手である吉田夕梨花」という役割性格を持っていて、それは、プライベートな場面での吉田夕梨花さんとは、また別のものです。
そして、「カーリング選手である吉田夕梨花」としてシナリオを作り、それをHCや他のメンバーと結びつけて、試合中に役割を演じるのです。
オリジナルの自分にはできないことでも、役割性格の自分なら、やれるということがあります。
例えば、僕は、チームビルディングやコンサルティングを仕事にしていて、日々人前でしゃべっていますが、実は、オリジナルの自分はそれが苦手です。「人前でしゃべってよ」と言われても、できればやりたくないと思います。
ところが、「スポーツ心理学者の布施努」という役割性格を演じると、一日中、人前でしゃべっていることができます。
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