昇給・昇進を断って退職、36歳で再入社の「深い訳」 「外を見たい」と思っていた彼女の切実な事情

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世情や時代背景、自分自身の年齢、ライフイベントや自分を取り巻く環境の変化、さまざまな要因によって当然ながら人の価値観は変わるだろう。通常は、社員が会社に合わせる、自分に合った会社を探す、という行動になりがちだが、会社に柔軟な土壌があることにより「会社が社員に合わせて対応する」ことも可能なのだ。

出戻りはメリットだらけ

最後に、出戻り転職について、野口さんに意見をもらった。

「私はすべてプラスに働いている側ですが……現実的な話で言えば、出戻り転職はどうしても周囲からのハードルは上がる面はあるでしょうね。また、大きい会社だと退職金の制度や福利厚生のメリットをどうするんだ、といった問題点もあるでしょう。

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また、私自身としては、出戻りはメリットだらけだと思っています。一度辞めた会社に戻るというのは悔いがあって戻ってくる場合もあるし、成長して戻ってくるわけなので、成し遂げられるものも大きくなると思います。なので、事前にコミットする役割への合意がとれている状況が多いと思うんですよね。

私の場合、会社の根本的思想が好きだから戻ってきました。戻る人ってやっぱり会社への愛情があったりすると思うし、それって会社にとって財産だなって思うんです。そういう社員が増えていくのは会社にとってもいいことだと思います」

ガイアックスのウェブサイトを見ると「起業したい方へ」という言葉が目立つ。“起業家輩出”を古くから掲げていてそれがベースにあるため、個人の人生ややりたいことを応援し、そのために時代に合わせて会社を変えていくという文化があるそうだ。

会社の根本思想は変わらないものの、ガイアックスはその思想を実現するために「手段」を変えているのではないかと筆者は感じた。いや、手段を変えるというよりは余白を残しておくという感じだろうか。

特にWeb業界は、わずか数年間で会社の雰囲気が劇的に変わることも多く、それがネックとなり出戻りを躊躇する人もいる。でもガイアックスには変わらない思想があるからこそ、安心して出戻りができたのだろう。

学びになると同時に、「戻りたくなる組織の作り方」の奥深さ、難しさを感じた取材でもあった。

本連載「戻りたくなる組織の作り方」では、出戻り転職を経験した方からの体験談をお待ちしております。実名・匿名を問いません。お申し込みはこちらのフォームよりお願いします。
桐山 奈々 フリーランス人事

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きりやま なな / Nana Kiriyama

広告IT業界で人事を経験し、2017年よりフリーランスとして活動。東京の企業を中心に、経営者や人事部に対して、組織構築・人材採用の支援を行なう。

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