筆者はこれまでさまざまな企業の人事や人材採用に関わってきたが、彼女のように「腕試ししてみたい!」という人を引き止めるのは、なかなか難しいと感じている。会社が今まで以上の条件を提示したとしても、『外の世界を見たい』という本人の想いの強さはなかなか変えられないものなのだ。
しかし、結論から述べるとその後、野口さんはコンサルティング会社や制作会社で勤務。5年ほど経った36歳頃、ガイアックスに出戻りしてくることになる。
それだけ「外を見たい」と思っていたのになぜ? そこには、なかなか切実な事情があった。
人生の選択肢を減らしたくなかった
「当時の勤務先が広告代理店に買収されて吸収合併することになり、当時取締役だった私は、部下たちのリストラや再就職の支援などを担当するようになったんです。自分だけでなく、他の人のキャリアについて考えるのは、私としてもさまざまなことを考える機会となりました。
また、プライベートな事情もあって。当時36歳くらいだったんですけど、勤務先の会長に『今は大事な時期だから、家庭より仕事を優先してね』って言われたんですよね。つまり子供を作らないでねって意味です。もともと子供を持つことに強い憧れがあったわけではないんですけど、一人は欲しいなって思いもありましたし、『配偶者の意思も尊重したい』『人生の選択肢を減らしたくない』という気持ちが強かったです」
今ではそういった話を聞くことも少なくなってきたが、当時はよくある話だったのではないだろうか。水面下で行われた話ではあったが、年齢的なタイミングもあり、この出来事がきっかけとなり転職を決意することになった。
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