朝比奈:学生がかわいそうですよね。ただ、私が学生だった1990年代と違うのは、インターネットを使って就職活動ができるようになったことだと思います。それはよい変化だと思いました。
常見:ところがそうじゃないんですね。
朝比奈:違うんですか?
常見:就職ナビにより、応募の肥大化が問題になりました。
朝比奈:企業の採用ホームページなどを見ると、「先輩社員からのメッセージ」や「先輩社員の1日」といった情報が見られて、かなり参考になると思ったんですが……。
常見:はい。ただ、あれは所詮、企業が作ったものですよ。登場する社員や情報もかなり精査されていますし、内容も「盛って」います。たとえば、結婚、出産・育児の後、復帰した人はほとんどいないのに「子育て社員がいるぞ」とデカデカと紹介するのです。
朝比奈:ではFacebookやTwitterといったソーシャルメディアの活用は学生にとって有利に働きはしないんですか?
常見:情報収集、OB・OG訪問のアポとり、学生同士でつながるのには便利ですけどね。そこで大学の先輩や、高校の同級生、一緒に選考を受けた人などを見つけて情報収集すると、濃い情報が得られますね。
朝比奈:それを聞くと、結局、ネットよりも地道に人と接触することのほうが大事な気がしました。
常見:そう。ネットはあくまでキッカケですね。社会人でも、足で情報を稼ぐことが求められますから。そういった能力が社会で求められるのは今も昔も変わりません。
合同説明会は採用担当者にとっての戦場
朝比奈:採用担当者の方は、ネット上の会社の評判を気にしているものなのですか?
常見:非常に気にしています。少なくとも「2ちゃんねる」や「みんなの就職活動日記」はリスクマネジメントという観点も含めて読んでいますね。朝比奈さんは創作のつもりで書いたかもしれませんが、実際の採用担当者の姿は『あの子が欲しい』そのままですよ。
朝比奈:学生にとって採用担当者は自分を値踏みする存在だから、強く見られがちだけど、本当はそうじゃないかもしれませんね。
常見:そのとおりです。この作品の優れているところは、「採用担当者も弱い立場」ということを可視化したところではないでしょうか。いや、実際大変なのですよ。採用活動は毎日が戦場。学生の前で元気な自分を演じ続けないといけませんし、社内のしがらみもありますし。
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