塩野:日本と米国では法の成り立ちも違いますからね。
佐藤:積み重ねが法を少しずつ変えていく。判決がたまっていくと、だんだんもともとの法律の意味とズレていきますからあまりにもズレが大きくなると、立法しようかという話になるんです。だから変化が遅い。その点、米国は社会にダイナミズムがある。しかも日本と違って、州と連邦という2つの法律がある。最初に州レベルで変わり、連邦レベルでも変わっていく。同性婚を認めるか否かなどは、まさにそういう例の1つです。ワシントンD.C.にいると、みんな毎日政策の議論をしているので、楽しい人には楽しいですよ(笑)。
ブルッキングスは「目的地」ではない
塩野:そういうワシントンD.C.の政策屋さんたちのモチベーションって何ですか。
佐藤:いろんなモチベーションを持っている人がいますが、おそらくみんな思っているのは「これはただのステップでしかない」ということでしょうね。ブルッキングスで終わろうなんて思っている人はひとりもいません。私の同僚のひとりは、オバマ政権下のホワイトハウスにいたすごく優秀な女性ですが、彼女は「ブルッキングスは比較的暇だ」と言っているぐらいですから。別にブルッキングスがいやだという意味じゃなくて、ここはディスティネーション(目的地)ではないと。
塩野:止まり木だと。
佐藤:そうです。ですから彼らのモチベーションはここで箔をつけて、もっとステップアップして、やりたいことをやるぞということです。
塩野:日本においては、ステップアップを前提とした機関ってあんまりないですね。
佐藤:ないですね。実は私も永遠にいたいとは思ってないんですよ。今は幸せですし、楽しいなと思って頑張っていますけれど、別にここが最後だとは全然思っていません。
コミュニケーション力は絶対に必要
塩野:日本の若い人で、国連のような国際機関で働いてみたいと漠然と思っている人って多いと思いますが、そういうところでサバイバルしていくために必要なことって何ですか。
佐藤:そうですね、やっぱりコミュニケーション能力は絶対に必要ですね。ギブ・アンド・テイクの世界ですので、俺はおまえにあれをやってあげたから、これを返してくれという、その繰り返しでしかないんです。それがコミュニケーションなしにできるかというと、やっぱり無理です。もちろんコミュニケーションだけでもダメで、おカネを取ってこられるとか、そういう能力も必要ですけど、最低限、コミュニケーション力がないと戦えないということはあると思います。
あとは、自分の価値をちゃんとわかっていて、チームの中で足りないものを補完するという選択が自分でできるか。それをするのが幸せじゃなかったら、そこにいる必要はないですから、むしろ外に出たほうがいいと思う。自分がここに存在する価値があると思っていて、このチームの中で自分はどんな役割を果たすべきかが見えていれば、組織のほうもその人を捨てようとはならないと思うんですよね。
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