塩野:「仕込み」はなしですね。
佐藤:全然ないということが、私にはわかりました。
塩野:でもブルッキングスの手法はある意味、すごく効率的かもしれない。日本のタウンミーティングや霞ヶ関の識者ミーティングでは、事前に参加者の知識や知見のレベルを合わせておかないせいで、ゴールのない議論になってケンカして終わる、みたいなことがありますから。
佐藤:そういうことはあまりないんですよ。でもどんな人が来ても全然かまわないとわれわれは思っていますし、むしろ来てほしい。しかしチャタムハウスは本当になんというか、何が大事なんだろうという思想的なことを、お茶を飲みながら議論するサロンなんですよ。それで最後にお酒が出たりする。だから、おカネをかけている場所が全然違います。
塩野:やっぱり英国風ですね。
佐藤:まさにそうですね。僕は正直に言うと、米国流が好きだったんです。カジュアルだけど、バシッとした政策を出して、その情報がどんどん広がっていくというのが好きだった。でもイギリスにはイギリスのやり方があるとつくづく思いましたね。たった1日しかいませんでしたが。
ですから前回も言ったように、ブルッキングスが「研究ができる広告代理店業」だとすれば、チャタムハウスは「研究ができる政治サロン・コーディネーター」だと思ったわけです。
パートナーの扱いひとつとっても、違い
佐藤:もうひとつ、チャタムハウスがブルッキングスと若干違うなと思ったことがあります。チャタムハウスでは寄付をした人やパートナーシップを結んでいる機関の名前を並べて、壁に貼ってあるんですが、それを見ると、規模が小さそうなところもパートナーに入れてあげているんですよね。パートナーになると、メンバーしか出られない会の案内が来るんです。そのために年間で50万円払うけれど、ブルッキングスの感覚でいうと、50万円では安すぎる。なので、そのボードを見ただけでおカネの集め方が違うと感じました。
やはり中に入ってみると意外にわかるもんだなと思いましたね。塩野さんの本にも、「つねに現場に行け」と書いてありますけど、本当にそうでした。
塩野:そうですね。今、米国の世界秩序における地位が、相対的に下がっていると言われていますが、日本の官僚や、政治エリートがそういったところに関わっていくことに意味があると思います。
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