「ジョブ型」で失敗する会社と成功する会社の大差 仕事の理解に欠ける人事部が運営する矛盾の解消法

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こうした反論は、一見もっともな意見のように感じるが、よくよく考えるとおかしなことを言っていることに気が付く。

管理職と人事部の役割

そもそも管理職というのは、個では成し遂げることができない目標の達成をチームという集団を率いて達成するのが最も重要かつ基本的な役割である。つまりこれこそ「本業」なのである。そしてその本業を全うするためにトレーニングを受けて知識を習得するのもまた企業の管理職にとって当然の義務といえよう。

人事部は、管理職がその本業である人事管理を正しく行うためにトレーニングする義務がある。また人事管理にあたり管理職をサポートすることは人事部の本業である。

そのためには、まずは人事部自身が、その意義や必要性を十分に理解し、やる気にならなくてはいけない。

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そもそも、このシフトを推進することは、人事部にとって大きなインセンティブが働きにくい。なぜならば、人事部にしてみれば、これまで自らが握っていた権利を手放すこととなり、そのことで管理職に感謝されるかといえば必ずしもそうではなく、管理職からは単なる「仕事の押し付け」と受け止められやすいからである。

とはいえ、諦めてはいけない。

ジョブ型の人事制度を管理職が中心となって人事管理を行っていく体制にシフトするにあたっては、自社の人事諸制度がどのような狙いでできており、どのようなツールを使ってどのように運用するのが適切なのかといった、「企業内人的資源マネジメント知識」が、必要になってくるだろう。

そしてこれを管理職に対して教育できるのは、外部の業者ではない。他ならぬその企業を知り尽くした人事部なのである。

一守 靖 事業創造大学院大学 事業創造研究科教授

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いちもり やすし / Yasushi Ichimori

慶應義塾大学経営学修士(MBA)、同博士(商学)。長年にわたりヒューレット・パッカード、ティファニー、NCR等の主に外資系企業における人事部門の責任者としてグローバル人事制度の導入、次世代リーダーの育成、企業変革等を推進すると同時に、複数の大学院における教育活動に従事。アカデミックの知見をビジネスの実践に活かす取り組みを行っている。

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