しかしながら、その実態は移行前とさほど変わらず、制度上は「成果主義」の人事制度になっても、その運用実態が「年功主義」から抜け出せかなった。
日本的雇用“慣行”というのは、なかなか根強いのである。従っていま元に戻しても誰にも気づかないかも知れない。
とはいえ、このアプローチで矛盾をなくすことは、「ジョブ型」再考を意味する。政府の総合経済対策とも逆行する。このシナリオを選択すべきなのかは慎重に議論すべきである。
【シナリオ2】
すでに移行した「ジョブ型」の人事制度を、もとの「メンバーシップ型」の人事制度に戻しますとは言いづらい、というのも現実である。
そこで、覚悟を決めて、「ジョブ型」を定着させ、人事部が中心になって行っている人事制度運用のやり方を現場の管理職に移行することによって矛盾を解消する。
人事部の不安感と管理職の負担感
この際ネックとなるのが、
① 人事部が特権を手放す不安感
② 現場の管理職の負担感
である。
まず人事部からの反論を予想してみよう。
①現場の管理職はもともと人事管理が本業ではないので、それを担うだけの十分な経験や知識がなく、適切な運用がなされない
② 現場の管理職は、わからないことがあれば都度人事部に確認しながら進めるだろうから、管理職側も人事部も必要以上に時間をとられる
③従業員との問題を未然に防ぐために人事部から管理職に対して継続的に支援やトレーニングを提供しなければならない(ので大変)
という反論が出そうである。
管理職からの反論もほぼ同様で
① 現場の管理職は本業が忙しく人事管理に割ける時間がない
② 労働法など覚えるべき事が多く、研修にも多くの時間を費やさねばならない(ので大変)
という反論が想定できる。
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