成果主義が「仕事ができない人」を放置する大矛盾 仕事ができる人のやる気削ぎ、揉め事も引き起こす

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人事評価 成果主義
「あの人は問題だ」と誰もが思っていてもそれが成果主義では是正されない理由とは?(画像:kyokyo/PIXTA)
人々の知識、スキル、能力などを指す「人的資本」への投資を増やすべきであるという考え方が注目を集めている。内閣官房は今年8月に「人的資本可視化指針」を発表した。そこでは経営戦略と人事戦略、ならびに各人事施策の間に一貫性と整合性を持つことが重要視されている。
ところが「現実には、整合性どころか矛盾だらけの人材マネジメントが多数存在する」と指摘するのは、事業創造大学院大学の一守靖教授。最新刊『人的資本経営のマネジメント: 人と組織の見える化とその開示』から一部抜粋、企業でよくみられる人材マネジメント上の矛盾について5回連載で紹介する。

成果主義の動き

評価制度・賃金制度に関する慣行については、1990年後半に実施された富士通の人事制度改革を主なきっかけとして、さまざまな議論がなされてきた。いわゆる「成果主義」の議論である。

1990年代後半から2000年代初頭にかけて相次いだ成果主義の導入は、それに対するさまざまな問題点の指摘を受けて、日本の雇用慣行に適合した形で修正がなされてきた。

例えば、日本において中心的な人事制度である職能資格制度(人を基準とした制度)と欧米における中心的な人事制度である職務等級制度(仕事を基準とした制度)の中間的性格を持つ、役割等級制度の導入が拡大しつつある。

同時に、職能資格制度を維持している大多数の企業においても、職能資格制度の枠組みの中で、年功的な性格を弱め、成果主義的な要素を取り入れつつある。

そもそも従業員に成果を求めない経営者はほとんどいないだろうし、成果を出した従業員をより高く評価するというのもごく自然な発想である。

ひところ「成果主義」の是非が問われたのは、その程度が当時の社会の状況と照らして少し行き過ぎていたと考えた人々が多かったからかもしれない。

これも理解できる。

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