脳が半分しかない女性
運動は、脳の成長をストップさせる物質の働きを弱める。運動で何歳からでも脳を変えられることがわかってきた。
変化という脳の特性は、脳科学の専門用語で「神経可塑性」という。これは脳の最も重要な特質だ。子どもの頃ほど柔軟でないにしても、その特質が完全に失われることはない。今でもそれはそこにある――大人になっても、80歳になっても。
脳が柔軟で変化しやすいことを確かめるため、ここで44歳のアメリカ人女性、ミシェル・マックの身に起きたことを見てみよう。彼女の類まれな人生が、研究者の認識を変え、人間の脳に備わる可能性を教えてくれた。
ミシェル・マックは1973年11月、アメリカのヴァージニア州で生まれた。生まれてから数週間後に、両親は異変に気づく。ミシェルは物に視線を定めることができず、身体の動作は不自然で、とくに右腕と右足を動かすことに支障があった。両親は数え切れないほどの専門医にミシェルを連れて行ったが、誰一人彼女の症状を説明できず、脳のレントゲン写真を撮っても原因はわからなかった。
ミシェルは3歳になっても歩くことができず、言葉も遅れていた。かかりつけ医はもう一度X線検査を受けるよう勧める。最初に検査を受けたときよりも診断技術が進歩していたからだ。そして1977年、C A Tスキャンの結果に両親と医師は愕然とする。ミシェルの脳は左半球がほぼ欠落していた。
ミシェルはそれまで半分の脳で生きていたことになる。おそらく胎芽の段階で、何らかの問題が起きたのだろう。ミシェルの左脳は、90%以上欠けていた。
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