一橋も学部を新設「データサイエンス人気」の虚実 ビジネスでは人材のミスマッチも起きている
日本の大学でデータサイエンス学部・学科開設の動きが加速している。
2023年4月には難関国立大学の一橋大学が、約70年ぶりとなる新学部として、文理融合のソーシャル・データサイエンス学部を設置する。DX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流でデータ利活用の機運が高まる中、大学にとってデータサイエンス学部・学科は産業界のニーズに応え、就活に有利な学びとしてもアピールできる。
一方でビジネスの現場では「データサイエンティスト」の定義や職務が曖昧なため、人材のミスマッチが起きているとの指摘も挙がっている。
金融機関の営業からデータ分析の道へ
外資系コンサルのEYストラテジー・アンド・コンサルティングのシニアコンサルタントである濵田朋宏さん(28)は、データサイエンティストとして、自治体の再生可能エネルギー政策の実効性分析に携わってきた。
太陽光発電や蓄電池などの再エネ機器の導入に補助金を出すことが炭素削減にどの程度貢献するのか、機器の使用データなどから分析して効果を試算するとともに、より望ましい政策を検討した。
「政策効果の正確な試算は、従来は難しかったのですが、データと統計モデルを活用することで、根拠に基づいた検証ができるようになりました」
そう語る濵田さんは東京大学工学部を卒業後、同大学院で電力経済を研究、2018年に政府系金融機関に就職した。
「学生時代からデータサイエンスの勉強はしていましたが、当時は仕事として考えるほど広がっていませんでした」
金融機関で営業に配属された濵田さんは次第に、「社会にいろいろなデータがあるのに活用しないで投融資判断をするのはもったいない」と考えるようになった。だが業務で気になったことを統計モデルを作って分析すると、周囲に「そこまでしなくていいよ」と言われた。
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