一橋も学部を新設「データサイエンス人気」の虚実 ビジネスでは人材のミスマッチも起きている

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一方で企業側の課題もある。

AWSの小林本部長は「データを集めて活用し、知見を得たいと考える企業は多いですが、取り組み状況は千差万別です。企業によってデータサイエンティストに期待する仕事の内容にも幅があります」と実情を明かす。

データサイエンティストの人材難は、「企業が求める能力の定義や評価制度の曖昧さ」にも一因があるとの声も少なくない。佐伯事務局長は「ビジネス経験の浅い若手の活躍を後押しするためにも、企業が求めるスキルを明確にし、ビジネス課題や産業特性の研修などの人材育成制度や評価制度を整備することも必要」と指摘する。

デジタルスキルのノウハウがたまりにくい

また、濵田さんは「データを使って何をしているかも明確になっていない段階で、グーグルに入れるレベルのスキルを持つ人材を、日本企業のエンジニア並みの給与で募集している企業もあります。日本企業はグローバルのIT競争で後れをとってしまいましたが、データ時代に同じ轍を踏まないようにしなければ」と語った。

AWSのデジタルスキルレポートでは、「日本企業はITをアウトソーシングに依存する傾向があるため、デジタルスキルに関するノウハウがたまりにくく、イノベーションを推進しにくい環境になっている」「学生が仕事で通用するデジタルスキルを習得するための教育制度が不十分」と考察している。

小林本部長は「データがあれば何でも解決するわけでなく、知見を得るためにはトライアンドエラーが必要。大事なのは企業の姿勢と人材への投資です」と話す。GAFAや中国のメガITが台頭する中で、日本企業が取り残されてしまったのは事実だ。データの時代に日本企業が“復権”できるか。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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