一橋も学部を新設「データサイエンス人気」の虚実 ビジネスでは人材のミスマッチも起きている
ただ、取れるデータが爆発的に増え、データ分析ツールも進化しているものの、人材確保は追いついていない。データサイエンティスト協会が今年4月に発表した国内企業の採用動向調査結果によると、直近1年でデータサイエンティストを増やした企業が41%に上ったのに対し、「目標通り採用できなかった」企業も62%あった。
またAWSがアジア太平洋地域(APAC)6カ国の労働者のデジタルスキルを詳細に分析したレポートは、日本人のデジタルスキルを「インドとインドネシアより高いが、高所得国の中では下位」と評価。2025年までに2950万人のデジタルワーカーが追加で必要となると試算した。特に高度なクラウドコンピューティングとデータに関するスキルの需要は2021年から2025年にかけて3倍に増えるという。
2017年に滋賀大学が全国で初めてデータサイエンス学部を設立したのを皮切りに、学部・学科の新設が相次いでいるのは、こうした産業界の強いニーズを背景にしている。
来春同学部・学科を開設する顔ぶれをみると一橋大学、京都女子大学など文系中心の大学や女子大も含まれ、データ活用スキルが業界、職種を問わず求められるようになった時代を反映している。
言葉が独り歩きし、定義があいまいに
データサイエンス領域が脚光を浴びる一方、言葉が独り歩きし、定義があいまいになっている現状もある。
データサイエンティスト協会は、データサイエンティストを「データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」と規定している。
目的は「ビジネス課題の解決」で、その手段としてデータ活用があるのだが、佐伯事務局長は「データサイエンティストの需要と求められる役割が広がる中で、プロセスや業務の細分化が起きている。機械学習やデータエンジニアリングのプロが活躍する一方で、ビジネス課題の解決への意識が薄くなるケースも散見される」と指摘する。
EYの濵田さんも、「なぜ職業に『サイエンティスト』とついているのか。ビジネスで起きていることをサイエンス的に観察し、知見を取り出すことが重要だからです。教育機関も学生も、ツールの使い方ばかりにフォーカスしないでほしい」と話し、「大事なのはサイエンス思考で、データサイエンス学部・学科を専攻しなくてもデータサイエンティストという職業には就けます」と続ける。
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