アリストテレスとプラトンは一体何が違ったのか 両極端な2つの人間のあり方を体現している

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
アリストテレス
アリストテレスとその師匠のプラトンとの対比には深い哲学があります(写真:abelskaya/PIXTA)
フランスの高校では哲学が必修、バカロレアと呼ばれる大学入学資格試験では文系理系を問わず哲学の筆記試験が課されます。これは欧米の特にエリートにとって、哲学は不可欠な教養であるとの歴史的に根付いた考えがあってのことです。
人気哲学者シャルル・ペパンが、西欧哲学者10人をコンパクトかつ通史的に紹介したベストセラー教科書『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』からアリストテレスの章を一部抜粋、再構成してお届けします。

アリストテレス

紀元前384~前322

ギリシャの哲学者。医者の息子でプラトンの弟子。高校(リセ)の語源であるリュケイオンの創立者。現実主義と百科全書派の祖。

弟子には用心したほうがいい。アリストテレスはプラトンの弟子だった。20年近く、アカデミアに通いつづけた。だが、彼の著作は、プラトンに逆らうような言説であふれている。

アリストテレスは地上の人間、多様性を擁護する立場からプラトンを批判し、唯一絶対の永遠のイデアを否定する。可感界から目をそむけ、天界を見上げよと説いたプラトンに対し、アリストテレスは可感界に向き合い、多様性や複雑さに目を向け、現実を間近で、至近距離から観察する。

彼はほかのどんな思想家よりも、類型学や分類学に注目した。粘り強く、飽くことなく精密に、アリストテレスは分類し、名づけ、仕分けしていく。

その対象は植物、動物だけではなく、人間の性質や政治体制にまでおよび、百科事典のようにすべての存在を網羅するという壮大な計画に挑んだのだ。たぶん百科全書の編纂という野望を最初に抱いた哲学者は彼だろう。

プラトンは外見にだまされるなと書いたが、アリストテレスは観察を重んじる。知識と行動のためには観察すること、感じることが大事だというのだ。

ハンマーをつくろうと思ったら、空を見上げて理想のハンマーの放つ永遠の輝きを求めても無駄だ。それよりもハンマーの多様性を観察することから始めよとアリストテレスは言う。最良の政治体制を考えるなら、政治の原則を理想の世界に求めるよりもまずは既存の政治体制を分析し、そこから教訓を引き出す。

次ページアリストテレスはただの経験論者ではない
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事