脳は、身体を活発に動かすとドーパミンを放出して気分が爽快になるようにプログラムされている。それは、狩りが生存の可能性を増やすからだ。そのほか危険な猛獣から逃げたり、住みやすそうな場所を探したりすることも、生存の可能性を増やす。
脳は1万年前からほとんど進化していないため、現代の私たちにも、このメカニズムが残っている。祖先の生存の可能性を増やした行為と同じことをすれば、脳はそれを繰り返させようと快感を与えてくれる。私たちがランニングやウォーキングをして家に戻ると、脳は食べ物や新しい住処を探していたと解釈し、報酬として多幸感を与えてくれる。
「集中力」「記憶力」の低下も運動量と関係が
さらに、運動すれば「集中力」や「記憶力」「学力」にまでいい影響が及ぶことが判明している。これは、祖先が置かれた環境を考えれば理解しやすい。
サバンナで狩りをしていたとき、集中力を保つことは必須だった。獲物を仕留めるには精神を集中して忍び寄り、わずかな動きも見逃さず、素早く行動する必要があった。あなたや私が運動すると集中力が高まるのは、そのためだ。
また、祖先にとって動き回ることは新しい住処や環境を探すことでもあった。生存に最適な場所を見つけたなら、今度はそれを覚えておく必要がある。座ってばかりいて動かないと、脳は新しい体験をしていないと解釈し、記憶力を高める必要はないと判断する。スマホやパソコンを通して新しい経験をするために、脳は進化していない。座って画面を眺めていても、脳はそれを新しい経験だと考えないので、記憶力は高まらない。
運動をすると創造性や、ストレスに対する抵抗力も高まる。情報を素早く処理できるようにもなる。裏を返せば、体を動かさなければ、これら運動の恩恵と真逆の「お仕置き」を喰らうことになる。日常的な運動量が減ることで、認知症リスクの上昇も懸念されている(事実、歩く習慣のある人は認知症発症率を40%減らせることが判明している)。
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