在宅ばかりの人は脳が本来の役割を果たせてない 体を動かさないことは脳の存在理由と矛盾する

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基本的には、移動する生物にだけ脳がある。植物は移動しないため、脳はない。

初めてこの世に脳細胞が登場したのはおよそ6億年前で、主な機能は原始的な生物の動きを制御することだったと考えられている。

あのエジソンの言葉にも残っている

つまり、地球上に初めて現れた脳細胞の最も大事な仕事はその生物を移動させることだった。その頃の脳細胞は、「集中力を発揮する」といった複雑な仕事ではなく、もっと単純で本能的な仕事のために働いていた。栄養分を摂り入れるために、その生物をほうぼうに移動させていたのである。

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人類も同じだ。最も大切な脳の仕事は「動きの制御」だったと考えられ、今の時代でもそれは変わらない。そう考えれば、もし体を動かさなかったら、脳が影響を受けないはずはない。脳なくして体は動かせない。そして体を動かさなければ、そのためにできている脳も機能できない。トーマス・エジソンの「身体の主たる機能は、脳を持ち運ぶこと」という言葉は言い得て妙と言える。

ほんの少しでも祖先の生活に近づいて体を動かせば、私たちの脳は、今よりもっと効率よく働いてくれることだろう。脳本来の役割を果たすためにも、少しでも体を動かす機会を取り入れたいところだ。

アンデシュ・ハンセン 精神科医

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Anders Hansen

ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学を卒業後、ストックホルム商科大学にて経営学修士(MBA)を取得。現在は王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら執筆活動を行う傍ら、有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど精力的にメディア活動を続ける。前作『一流の頭脳』は人口1000万人のスウェーデンで60万部が売れ、その後世界的ベストセラーに。

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