「脳は20歳以降衰えるだけ」と信じる人の大誤解 死が目前であっても新しい脳細胞は常に生まれる

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脳 女性
90歳になっても脳に新しい細胞は生まれているのです(写真:Melpomene/PIXTA)
従来、脳は20歳までに完成し、あとは衰える一方とされていました。しかし近年の研究で、死ぬ間際になっても人の脳内では新しい細胞が誕生していると判明。『運動脳』著者のアンデシュ・ハンセン氏が、成人後の脳細胞について、細胞新生をうながす方法と合わせて最新事実を解説します。

脳の大きさは25歳頃がピークで、その後年齢とともに徐々に小さくなっていく。1日に失われる細胞は約10万個。1年中、毎日24時間、耐えることなく死滅している。脳にはもともと100億もの細胞があるとはいえ、時間とともに失われる数は膨大なものになる。脳そのものは、毎年0.5〜1%ずつ縮んでいく。記憶の中枢・海馬も同様に1年で約1%小さくなる。

しかし近年、成人後の脳でも新しい細胞が生まれ、脳内の連携が発展するメカニズムが解明されている。この脳細胞の増殖を加速させる行為こそ、「運動」である。

海馬で「細胞新生」が確認された

スウェーデンのサールグレンスカ大学病院の研究者、ピーター・エリクソンは、成人の脳でも新たな細胞ができるか調べるため、「BrdU(ブロモデオキシウリジン)」という、主に腫瘍専門医が使う、ガン細胞が分裂・増殖したかを調べる試験薬を使用した。

BrdUを使うと、ガンで増殖した細胞が染色されるが、ガン以外の細胞でも新しくできたものは染色される。エリクソンは、ガンで死亡した患者の脳内に新しい細胞ができていれば、BrdUがそれを染色して検出できると考えた。

新しい細胞を探すべく、5名の死亡患者の脳を解剖する許可が降りた。結果、5名全員の脳で新しい細胞が見つかった。しかも、記憶と情動制御の中枢・海馬で、である。

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