脳の大きさは25歳頃がピークで、その後年齢とともに徐々に小さくなっていく。1日に失われる細胞は約10万個。1年中、毎日24時間、耐えることなく死滅している。脳にはもともと100億もの細胞があるとはいえ、時間とともに失われる数は膨大なものになる。脳そのものは、毎年0.5〜1%ずつ縮んでいく。記憶の中枢・海馬も同様に1年で約1%小さくなる。
しかし近年、成人後の脳でも新しい細胞が生まれ、脳内の連携が発展するメカニズムが解明されている。この脳細胞の増殖を加速させる行為こそ、「運動」である。
海馬で「細胞新生」が確認された
スウェーデンのサールグレンスカ大学病院の研究者、ピーター・エリクソンは、成人の脳でも新たな細胞ができるか調べるため、「BrdU(ブロモデオキシウリジン)」という、主に腫瘍専門医が使う、ガン細胞が分裂・増殖したかを調べる試験薬を使用した。
BrdUを使うと、ガンで増殖した細胞が染色されるが、ガン以外の細胞でも新しくできたものは染色される。エリクソンは、ガンで死亡した患者の脳内に新しい細胞ができていれば、BrdUがそれを染色して検出できると考えた。
新しい細胞を探すべく、5名の死亡患者の脳を解剖する許可が降りた。結果、5名全員の脳で新しい細胞が見つかった。しかも、記憶と情動制御の中枢・海馬で、である。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら