この方法により、90歳で死亡したドナーの海馬の細胞が生成された年を知ることができた。研究者たちはドナーと同じ年齢の細胞の数、また、それよりも若い細胞の数を集計した。結果、海馬のほぼ3分の1の細胞のDNAの中に、このドナーが生まれた年以降の大気中と同じ濃度の炭素14が含まれていた。
この実験で、毎日、1400個の細胞が、成人の海馬で生まれていることが明らかになった。つまり海馬では、成人してからも毎日四六時中、新しい細胞が作られているのである。
科学の世界では、答えが1つ出れば、また別の疑問が生まれる。
Q 脳細胞は、どのような生活をしていても新生するのか? もし生活習慣に左右されるなら、それはどのようなものか?
Q 新生のスピードを速めることはできるのか? できるとすれば、何をすればいいのか?
この新生を加速させる方法こそが運動、とりわけ歩く・走るといった「有酸素運動」だ。
運動で「ニューロン増殖率」が2倍になる
記憶の中枢として知られる海馬は、体を動かすことによって最も恩恵を得る部位だ。体を活発に動かせば細胞の新生が2倍に増えることがわかっている。
私たちの体は、ほうぼうを移動して新しい環境や出来事に出合うという生存環境に適応するために進化した。新しく出合った環境は、記憶にとどめる必要がある。
つまり、運動が、脳が新しい情報を取り入れるための下地を作るのだ。脳は新しい体験を記憶にしっかり刻みつけるために、海馬に新しい細胞を作る。その細胞は、体を動かすことで得た知見の刺激を受けて生き延びるという仕組みである。
運動をすると、脳が新しいものを学ぶための土台ができる。歩きながら単語を暗記すると、覚えられる単語が20%増えるという話もある。
ウォーキングやランニングの習慣がある人は、いくつになっても脳内で細胞新生が活発に行われる。長時間続ける必要はない。20〜30分から効果がある。
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