会社を辞め、カレー屋開き「15年」続けられた理由 人気が出ても「店は増やすことは考えていない」

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馬屋原さんのカレーは、一皿あたり炒めた玉ねぎ一個分を使ったものがベースで、独自に配合したスパイスを効かせている。「食べ終わって1、2時間ぐらいしてから、幸せが胃から伝わってくるようなカレーにしたいと常々思っていて。身体がその感覚を覚えて、自然とまた食べたくなるような」。

メニューはチキンやナス、トマトなどの具材でバリエーションを持たせ、さらに辛さの程度を1から10まで選べる。チーズや発酵バターなどトッピングもカスタマイズできるため、具材・辛さ・トッピングを掛け算すればメニューの幅は実に広い。

玉ねぎ一個分を使い、スパイスを駆使したチキンカレーが「草枕」の基本メニュー。写真は発酵バターをトッピングしたもの。自家製ヨーグルトで作ったラッシーも人気だ(筆者撮影)

コロナ禍で休業要請を受け入れたり、デリバリー対応を始めたり、想定外の出来事もあったが、もうすぐ開店15周年。開店当初とは違い、今は守るべき家族がいる。そしてフルタイムの社員が4人、週1回程度しか来ない人も含めるとアルバイトは40人も数える。

しかし、2店舗目など店の拡大には興味がない。

「会社員を辞めてカレー屋をすると決めたときから、お金持ちになるのは無理だとあきらめました。毎日、楽しく生きていけたら良いと思っているので、店を増やすことは考えていません」。

店を続けて思うこと

店を長く続けていく中で、直面するのは「慣れ」との戦いだ。「毎日、同じような感じの日が続くと正直、しんどいときがあって。年を追うごとに、“慣れ”はどんどん深くなっていきます」。

お店を長く続ける苦労はあるが「カレー屋が好き」という思いは変わらない(撮影:今井康一)

純粋に趣味として楽しんでいたころは新しい味に出合うたびに刺激を受け、ワクワクした。お店の立ち上げ期も、無我夢中に生きていた。もちろんお客さんにも、一緒に働く仲間にも恵まれている今は、とてもありがたくて幸せだ。

でも「やっぱり人間、飽きますからね。何かしら新しいことをすると楽しくて、失敗しつつも少しずつ前へ進んで、できることが増える喜びがある。40歳を超えると、そういう感覚が薄れていくので、意識して大事にしていきたい」。他店を食べ歩き、客目線で良いところ、悪いところを観察。気づきを自分の店でも生かし、改善する手は止めない。

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