60歳で司法試験に「一発合格」元トヨタ社員の奮闘 40代の終わり頃から「人生二度生き」を意識

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弁護士に転身して10年になる加藤さん(写真右)。30年余りのサラリーマン生活で幕引きせず、司法試験に挑んだ体験談を振り返ってもらいました(写真:加藤裕治さん提供)  
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定年後のセカンドキャリアを考え、50代からのリスキリング(学び直し)が注目されるようになっている昨今。しかし、記憶力の衰えを感じる年になってからでも、転身を考えた新しい挑戦は本当に可能なのか、疑心暗鬼になっている人も多いのではないだろうか。
ただ、中には年齢的に難しいと思われる資格や勉強に挑戦し、新しい生きがいを見つけた人もいる。例えば56歳で弁護士を目指して法科大学院に入学し、2012年に60歳で司法試験に合格した加藤裕治さん(71)=ラヴィエ法律事務所(愛知県名古屋市)=もその一人。

「脱会社員の選択」連載第8回は、弁護士に転身して10年になる加藤さんに、30年余りのサラリーマン生活で幕引きせず、司法試験に挑んだ体験談を振り返ってもらった。

トヨタ自動車に入社

加藤さんは大学を卒業後、トヨタ自動車に入社。法務部に配属され、8年間勤務したのち、32歳から労働組合の専従となって働いた。数年後には職場へ戻るつもりだったが、組合運動にやりがいを感じ、36歳から40歳まではトヨタ労組の書記長として奮闘。

その後、産業別労働連合組織である自動車総連へ派遣され、49歳で自動車総連会長、ならびに連合(日本労働組合総連合会)の副会長に就任した。ほかにも政府の審議会で委員を務めるなどし、多忙な日々を送った。

傍目から見れば役職に恵まれ、充実した仕事人生を歩んできたように見える。だが、加藤さんの心の中では、大きな組織の中で、いくら自分が声をあげても、力が及ばない無力さや虚しさがくすぶり続けていた。

「私は日本の属人的賃金制度や年功序列制度にずっと疑問を持っていました。もっと労働市場が流動化すれば、一人一人が自立して働ける、いきいきした社会になるのではないか、と考えてきたからです。しかし日本の労働運動は “雇用を守る”に重点が置かれ、欧米のように“仕事を守る”という動きにはなりませんでした」

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