ブックオフの「入り口」としての機能
谷頭:出版を経験した今では、ブックオフで時々、自分の本を見つけることもあるんです。
三宅:自分の本を見つけるとめちゃくちゃうれしいですよね。
谷頭:著者の立場からすると「新刊書店で買ってほしい」と思う人も多いでしょうけど、そこにはあまりこだわりはないんですよね。
三宅:そうですね。ブックオフにあるというのはそれだけ新刊が売れている証拠でもありますし、あとは私自身が、ブックオフで育ってきて、ブックオフでお金のない時代を過ごしてきたのもあります。
谷頭:感謝というか、恩返しというか。
三宅:そうそう。そもそも最初に、ブックオフという入り口がなかったら、本好きになってないよなって思うんですよ。
谷頭:僕自身は、個人経営の書店を批判するつもりはなく、かと言ってブックオフと比べてよりローカルで文化的に優れていると主張するつもりもなく、「ブックオフも個人経営の書店も、どちらもあったほうが豊かだよね」と思っている人間です。
三宅:私も同感です。
谷頭:そういう意味では、最近は個人経営の凝った書店も増えてきている印象なんですが、小中学生ぐらいだと敷居が高くて入りにくいと感じます。その年代だとやっぱりブックオフがいちばん入りやすい。入り口としての機能は、地方も都心も関係なく同じなんじゃないかなと思うんです。
三宅:あとは、現実的に子どもたちにはお金の問題もありますよね。今は書籍の値段が昔よりも上がってますし、マンガだと巻数も多いし。たくさん読みたい子どもにとって、ブックオフは読書へのハードルを下げてくれてると思いますし、それぐらいの余裕すらないと、結局業界も衰退するんじゃないかなって。
私自身、そうやって本好きになりましたし、大人になった今でも「新刊を買いに本屋さんに行くか」ってなるのも、ブックオフという入り口があったからだと思うんですよね。
谷頭:最後に、一応読者の皆さんにお伝えしておくと、僕たちのような考えを持ってる人が同世代の中でも多数派かと言われると、まだ確信が持てないところもあって。本好きって時点で今や少数派ですし、こういうことを語る機会もなかったから、同世代の共通認識じゃないかと思いつつも、問いかけている最中なんです。
カルチャー系のメディアならさておき、東洋経済オンラインだと、僕たちの考えが20代の総意のように見えるかもしれないからそこはきちんと言っておきたい(笑)。
でも一方で、こういうことって、いざ誰かが口に出し始めたら、共感する人は少なくないという確信もあって。だからこそ、僕としてはこの対談がブックオフをはじめとする、チェーンストア再評価の議論の出発点になればいいなと思っています。
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