三宅:私も、学校の図書室で見つけた作家さんの本を、ブックオフの105円棚(現在は110円)で片っ端から買ってました。
谷頭:どんな作家さんの本を買っていたんですか?
三宅:俵万智さんや、恩田陸さんなどですね。恩田さんって、とても作品数が多いじゃないですか。全部は図書館で借りられないので、ブックオフで買ってましたね。
谷頭:105円コーナーで目当ての商品を探した思い出って、絶対にみんな持ってますよね。僕もディズニーランドの昔のガイドブックをそこで集めたりして。ブックオフだからこそ出会える本なんですよ。
ブックオフが「職業・書評家」につながった訳
谷頭:とはいえ、今はネットが発達して、オンラインで本を買うことも増えています。でも、Amazonのサイト内で本を探す感じと、ブックオフの中で本を探す感覚って絶対に違うと思うんです。
「では、なぜ自分はブックオフの空間に惹かれるんだろうか?」っていうのはずっと思ってて。三宅さんは、ブックオフの空間の面白さはどこにあると思います?
三宅:ブックオフって「これが売れてますよ」ってレコメンドしてくる棚がほとんどないじゃないですか。私はそこが魅力だと思います。売れ筋の棚みたいなものもあまり見かけないし、あと、何が新刊かわからないのもいいですよね。文脈がない。
谷頭:全部がフラットに扱われてる感じというか。
三宅:そんな中に入って、「いくらでも居て良いからさ、何でも好きな本見て」っていう感じが好きかもしれない。そこに誰の意図もなく、さまざまな本が置いてあることが、一番の魅力に感じますね。
谷頭:書店チェーンでいうと、蔦屋書店の対極ですね。もちろんそれは蔦屋書店の魅力でもあるのですが、あそこは店がテーマ性に基づいた商品を徹底的に押し出しているので。
三宅:だから、ブックオフが「こういう本を売ります」って言い出したらちょっとショックですよね(笑)。
谷頭:とてもわかります(笑)。三宅さんの本では、『源氏物語』から『推し、燃ゆ』、果ては『トーマの心臓』までが紹介されてますよね。時代もジャンルもバラバラなものが全部フラットに入ってるところに、今話されたブックオフっぽさを感じました。
三宅:そうですね、そういう感覚はあるかも。今、自分が書評家として活動できているのも、売れ筋の本だけを読んでたわけじゃなかったのも大きいなと思っていて。みんなと同じように、流行の本だけを読んでたら、差別化ができてなかったと思うんです。ブックオフみたいに、昔の本も今の本も雑多にある中で本を探して読んでたのが今につながっているな、と感じますね。
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