母の「不機嫌ハラスメント」に心病んだ少女の転機 和解のきっかけは一冊の本だった

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以来、乃々花さんと母親の関係は、少しずつ温かいものに変わっていった。母親と自分は同じ痛みを味わってきた「同士」だと思ったら、かつては絶対的な存在だった母親が「自分と同じ一人の人間」に変わっていったのだ。

周囲の人たちとの関係も変わった

不思議なことに、母親との関係が安定すると、周囲の人たちとの関係も変わった。ずっと抱えてきた「他人への怯え」のようなものが、乃々花さんのなかから消えたからだ。

「たぶん、それまでもお母さんからの愛情はたくさん与えられていたのに、私が受け取ることをしていなかったんです。温かい言葉をかけてもらったことはないけれど、ご飯をつくってくれるとか、洗濯をしてくれるとか、そういうなかにも愛情はこもっていたことに気付くことができた。

人間って、自分が与えてもらったことしか、他の人に与えられないと思うんですけれど、私はそのときやっと、お母さんから愛情を受け取ることができた。だからそれを、他の人にも与えられるようになったんじゃないかな、と思っています」

自分は運がよかった、とも感じている。その後、母親も自分の母親である祖母との関係を変えようと働きかけたが、祖母は変わらなかった。自分の母親はたまたま変わってくれたけれど、世の中には変わらない親もたくさんいることを、乃々花さんは知っている。

つらかったあの頃があるから、いまの幸せがある。そう話す乃々花さんは、まだ20代なんだけれど、もっとずっと長く生きてきた人のように、ときどき感じられた。

本連載では、いろいろな形の家族や環境で育った子どもの立場の方のお話をお待ちしております。周囲から「かわいそう」または「幸せそう」と思われていたけれど、実際は異なる思いを抱いていたという方。おおまかな内容を、こちらのフォームよりご連絡ください。
大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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