「“いい父親”だった時期が長かった分、壊れてしまった父親を見るのが辛かった」。20代の舞さん(仮名)の言葉には、痛みがにじんでいた。
小学生のときから、ある競技に打ち込んできた舞さんは、中学生のときに、世界大会で優勝までしている。毎日練習に付き添ってくれたのは父親だった。でもその父親は、舞さんが高校生のとき、すっかり変わってしまった。
アルバイトをいくつも掛け持ちしてきたが、最近やっと給付型の奨学金を受けられるようになった。大学院に通いつつ就職活動も始めたという舞さんに、家族のなかで見てきたものを、語ってもらった。
真面目で人当たりがよく、みんなに好かれていた父親
初めてその競技に触れたのは、小学校に入る少し前だった。「楽しい」と思い、父親にねだって道具を揃えてもらった。以来、毎日のように練習を重ねた。
世界大会に二度出場し、中学のときには総合優勝までしている。もともと日本のレベルが高く、世界大会は国内大会と同レベルというが、それにしても簡単なことではない。
練習場には、いつも父親が車で送り迎えしてくれた。会社はそのために早退をしていた。「子育てが趣味」のような父親だった。
勉強もスポーツもできる舞さんを、父親はいつも応援していた。舞さんは、この幸せな日々がずっと続くと思っていた。
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