「キャプテン翼」の南葛SCが体現するすごい経営 選手営業で予算倍増、セカンドキャリア実現も

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もちろん秋山のように未経験者はここからが本当の戦いになるが、「企業HPの問い合わせ欄に記入して、会う時間を作るところからやっています」と小さな努力を続けている。サッカー選手がパスやシュートのスキルを上げるように、こうした小さな積み重ねが確実に力になる。むしろ仕事の方がサッカーより成果が出やすい。そう捉えられれば、電話対応やメール処理、請求書の作成などの日常業務も前向きに受け止められるはず。その結果としてクラブ運営規模が拡大し、Jリーグ昇格に近づけば、一石二鳥と言っていい。

これに加え、南葛ではもう1つ興味深い集金システムを構築している。それが選手個人スポンサー制度。稲本や今野のようなプロ契約選手はJクラブと比べて年俸が低い分、個人で支援企業や支援者を募り、協賛金を得ることで収入アップが期待できる。それに熱心に取り組んでいるのが、ベガルタ仙台やセレッソ大阪で活躍した関口。すでに13の企業からスポンサードを取り付けている。

「日本エコライフやエス・ブイ・シーホールディングス、翔桜建設など仙台の企業が中心ですね。個人スポンサーも13~14人ついてくれて本当にありがたい限りです。その分、自分は広告塔としてピッチ上で活躍しなければいけない。SNSの発信など告知活動も熱心に行って、応援してくれる方々に還元する必要がある。こうやってダイレクトにサポートしてもらうとプロ意識が高まりますし、自分にとってのモチベーションにつながります」

個々の選手が自分で稼ぐ意識を持つ重要性

稲本や今野は所属事務所がアクションを起こしているようだが、選手個々が自分で稼ぐ意識を持たなければ、この先のJリーガーはやっていけないのかもしれない。それだけサッカーを取り巻く環境は厳しい。日本サッカー協会の登録選手数も2014年の約96万人から2020年は約81万人へと減少。コロナ禍の観客制限も逆風となり、人々の関心自体が低下していると言われるからだ。

4月18日に母校・中央大学で国際経営学科の講義に参加した元日本代表の中村憲剛(JFAロールモデルコーチ)が「90分間でなかなか点が入らないサッカーはコスパが悪い」という言葉を突き付けられ、ショックを受けていたが、それが現実なのは確かだ。

だからこそ、サッカー選手はプレー以外のスキルを現役中に身につけておくことが望ましい。あるいは知名度のあるうちに稼げる仕組みを構築することも肝心だ。それを具現化しながらJリーグ参入を目指そうとしている南葛SCのスタイルは、今後のクラブ経営に一石を投じることになりそうだ。

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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