「キャプテン翼」の南葛SCが体現するすごい経営 選手営業で予算倍増、セカンドキャリア実現も

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サッカー選手はいつか必ず引退する時が訪れる。指導者や解説者になれるのはほんのわずか。元日本代表クラスでさえも苦労するケースが少なくなく、大半が別の道を選ぶことになる。秋山のように兼業しながら仕事を覚えておけば、セカンドキャリアへの移行は確実にスムーズになる。そういう意図から南葛では選手営業の導入に踏み切ったのだ。

南葛SCが独自の経営を実現できたワケ

「株式会社南葛SCを設立し、Jリーグの百年構想クラブに認定されたのが2019年だったのですが、より強固な運営体制を作る必要があり、2020年から選手社員を3人採用。平日週3回の日中に営業の仕事に就いてもらいました。その1人である楠神は2019年まで清水エスパルスに所属していて、プロ専業の上位クラブからオファーがあったのに、『南葛で働きながらプレーしたい』と志願してくれた。

彼らが営業マンとしても実績を残してくれたので、2021年には大卒選手2人を増員。さらにJ3・長野パルセイロの渡辺淳前社長を事業本部長兼営業本部長に迎え、体制強化を図ったところ、関東1部昇格にこぎつけることができました。

そこで今年は総勢21人へと大幅増員に踏み切り、プロの営業コンサルティングスタッフも採用。『1人当たり年間600万円』という営業ノルマを課しました。その金額を稼げれば、自分ともう1人の選手・スタッフの分をカバーできる。その理解を促し、取り組んでもらっています。今季は2か月間ですでに5000万円の売上を記録。順調な滑り出しを見せています。彼らがここで成果を出せれば、いずれ別の仕事をしたとしても十分成功できる。実際、佐々木や楠神を見ていれば、それがよく分かります」

独自の経営策について語った岩本GM(筆者撮影)

こう語るのが、選手営業の発案者である岩本GMだ。長年、サッカーメディアに携わった彼は引退後の身の振り方に悩む選手を数多く見てきた。

そこで前職時代に元Jリーガーを雇用したところ、その人材が目覚ましい成長を遂げたという。こうした実績を踏まえ、「1つの物事に真摯に向き合い、愚直に努力するアスリートはセカンドキャリアでも前向きに取り組めるはず。そのための修業期間を提供し、社会人としての経験を積み重ねてもらえばいい」という考えに至り、このスタイルを確立させた。

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