「キャプテン翼」の南葛SCが体現するすごい経営 選手営業で予算倍増、セカンドキャリア実現も

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1つの柱と言えるのが、選手営業の導入だ。南葛には現在、21人の営業スタッフ(正社員と業務委託社員がほぼ5・5)がいるが、うち半数が元Jリーガーである。

2007~2009年の鹿島アントラーズのJリーグ3連覇のメンバーである佐々木竜太はその1人。2019年から同クラブに在籍し、2020年から正社員として平日週3回、葛飾区内の事務所で勤務。そのうえで、ピッチ上ではエースFWとして位置づけられ、エスペランサ戦でも先制点をゲットしている。

佐々木竜太選手(写真左)と今野泰幸選手(中央)、関口訓充選手(写真右)(筆者撮影)

「鹿島、湘南ベルマーレ、栃木SCとJリーグ3クラブでプレーした後、自分はプロサッカー選手を離れ、サッカードットコムという会社で物販やメディア系の仕事に携わっていました。その経験があったので、南葛でオフィスワークすることのハードルはそこまで高くなかったですね。

ただ、スポンサー営業で成果を出そうと思うなら、強いクラブ愛がないと難しい。最初は熱意を持って営業先にプレゼンしたり、広告を出してもらったりすることができなかったけど、徐々に慣れてきました」と佐々木は笑顔をのぞかせる。

働きながらサッカーができる環境の良さとは

彼のように職歴を持つ人間はまだいいが、プロ一本槍だった人間がいきなり選手兼営業になるのは難しい。この世界に今年からチャレンジした1人が秋山大地。現日本代表で10番を背負う南野拓実(リバプール)とともにセレッソ大阪下部組織で育ち、トップに昇格。愛媛SCやモンテディオ山形、ガイナーレ鳥取にレンタル移籍したうえで、今季から南葛入りした27歳のボランチだ。

秋山大地選手(筆者撮影)

「2021年末にセレッソとの契約が満了になり、新天地を探していた時、働きながらサッカーできるこの環境に身を投じてみるのも今後のためになると考え、加入を決めました。

仕事を始めたのは1月。パソコンに触ったことがなかったので、まずは操作を覚えるところが第一歩でした。セレッソ時代の先輩でもある楠神順平さんがリーダーを務めるグループに所属し、営業先にも同行しました。

最初に出向いたのは補聴器メーカー。スポンサー特典などを説明する彼の姿を見て学ばされましたし、企業から支援してもらう意味を再認識した。27歳で社会経験をさせてもらえて本当によかったと思います。

朝9時に出て、11~18時まで働き、19時過ぎから練習をするので、拘束時間はサッカー専念だった頃より相当長くなった。その分、パフォーマンスを出すのが難しくなりましたが、自分なりの落としどころを見つけていかないといけないと感じています」

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