「躓き(つまずき)」をどう乗り越えるか
ここまでの話から、実際に自分自身のネットワーキング・レベルに応じた行動をしてみようと考え始めた人も多いだろう。しかし、行動する際、何かハードルを感じて自分が思ったとおりに行動できないのではないかと不安に感じる人もいるかもしれない。多くのインタビューからわかったことは、今活躍されている方でもネットワーキング・レベルを上げるうえで躓いた経験があること、そして、行動をきっかけにその躓きを乗り越えてきたということである。実際の事例をいくつか紹介しよう。
レベル0~2の「躓き」を乗り越えた方法
・実際につながってみたい人と会う機会を得られたが、その人とどのような話題で会話してよいのかわからず、相手に良い印象を残せるかどうか不安に感じた。しかし、どうしてもその人につながりたいという気持ちを持っていたので、事前に相手が興味を持ちそうな話題を調べておき、自分との共通事項を見つけて相手の懐に入るようにした。さらに、相手との会話でも頷きや話すスピード、リズムを合わせるように心がけた。(Mさん・30代・ITコンサルタント)
・ネットワーキングをするうえで、自分から見るとキラキラした世界で活躍している人たちと出会った際、自分との価値観の違いに圧倒されてしまい、どうすれば、このような人たちとつながることができるのか、わからなくなった。しかし、「いろいろな人の仕事のパートナーになる」という志を持っていたため、まずはコミュニティーの中に飛び込んで、いろいろな人と会話をしてみた。(Kさん・30代・営業)
・あるコミュニティーに参加するも、その中で自分自身が入れるポジションがあるかどうか不安に感じていた。しかし、自分の志を実現するためには、人的ネットワークは不可欠と考えていたため、他の人とは違う面で貢献できないか考えていた。そこで、SNSに家族の話題を載せていたことから、「ファミリー・マネジメント」というタグで、コミュニティー内で家族イベントを実施したり、ファミリー・マネジメントで困っている人を助けたりすることで、コミュニティーに貢献した。(Yさん・40代・フィットネス・インストラクター)
レベル2~3の「躓き」を乗り越えた方法
・人的ネットワークの構築が進み、やりたいことが見つかったものの、共感してくれる人が周りにいるかどうか不安になり、立ち止まってしまいそうになることがあった。しかし、ほかの人がどう思うかよりも自分自身のやりたい気持ちのほうが強いことがわかった。周りに対しては「思いつきなのだけど」という枕詞を使って発信したり、予め共感してくれる人を1、2名確保してから発信したりしていた。(Bさん・40代・コミュニティー・ディレクター)
・周りの人から受けた依頼に応えることは大好きだが、逆に自分からお願い事をするのが苦手な性格。自分自身のやりたいことのために周りの人を巻き込んでよいのかと思い、依頼を躊躇することがよくあった。ある時、「いつもGIVEしてあげているのであれば、GIVEしてもらってもいいのだよ。依頼を受けた人も、自分自身の能力で相手に貢献できることによろこびを感じているはずだよ」と言われた。自分自身も依頼を受けた際、同じ気持ちになっていることに気がつけたため、周りの人に依頼することができるようになった。(Iさん・30代・エンジニア)
人的ネットワークの構築(人脈づくり)の方法は理解しても、いざ行動をしようとする際にハードル、不安を感じるのは当たり前のことなのかもしれない。そこを乗り越えれば、「人見知り」の殻を破って、人的ネットワークを拡げることができるので、思い切って、一歩踏み出す勇気を持ってほしい。
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田久保 善彦
グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長
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田久保 善彦 / Takubo Yoshihiko
慶應義塾大学理工学部卒業、学士(工学)、修士(工学)、博士(学術)。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所を経て、現在グロービス経営大学院 経営研究科 研究科長。経済同友会幹事、上場企業およびベンチャー企業外取締役等も務める。著書に『ビジネス数字力を鍛える』『社内を動かす力』(ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』、『グロービス流 キャリアをつくる技術と戦略』、『27歳からのMBA グロービス流ビジネス基礎力10』(東洋経済新報社)等、多数。
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