秘密結社が裏にいると信じる人が増えている訳 被害妄想的な感受性がコロナ禍で静かに広がる

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心のプログラムの誤作動が起点にある(写真:THEPALMER/iStock)
日本の社会が先行きの見えない不安に覆われている。驚くような事件や事象が次々と巻き起こる一方で、確かなものはますますわからなくなりつつある。わたしたちは間違いなく心休まらない「不安の時代」に生きている。しかもそれは、いつ爆発するかもしれない「不機嫌」を抱えている。そんな混迷の時代の深層に迫る連載第4回。

「Qアノン」とは何なのか

2020年は新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)によって、インフォデミック(偽情報の大流行)が世界各地で混乱を巻き起こし、陰謀論がメインストリームに躍り出るようになった年として記憶されることだろう。

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アメリカ発の陰謀論である「Qアノン」がイギリスやドイツ、オーストラリアなどの国々にも拡大し、日本でもアメリカ大統領選の一連の騒動をきっかけにその影響力を増している。ブルームバーグは最近、日本にQアノンの支部が出現したことについて報じている。

「ソーシャルメディア分析会社グラフィカの調査によると、日本国内のQアノンのコミュニティーは独特の用語や行動様式、インフルエンサーを持ち、国際的に最も発達した支部の1つとなっている。トランプ大統領の側近だったマイケル・フリン元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を崇拝する動きも目立つという」(日本にも「Qアノン」、独特な信奉者集団は陰謀論の世界的広がり示す/Bloomberg 2020年11月30日配信)。

Qアノンとは、一部のエリートから構成される悪魔を崇拝する小児性愛者の秘密結社が、政治やメディアを支配する「ディープ・ステート(闇の政府)」として君臨し、アメリカ合衆国連邦政府を裏で操っているとの見方を支持する集団である。そしてトランプ大統領は、そんな連中と人知れず戦っているヒーローだというのだ。もともとは2017年に政府の内通者を自称する「Q」が匿名掲示板に投稿したことに端を発している。

大変興味深いことではあるが、これらの荒唐無稽なおとぎ話が、コロナ禍によって世界各国に輸出され、現地の陰謀論と融合して、独自の発展を遂げている。つまり、Qアノンがいわば都合のいい母体となって、さまざまな妄想を吸収しているのである。

そもそも元祖のQアノン自体が、アメリカ・ワシントンのピザ店が小児性愛と児童買春の拠点とされ、ヒラリー・クリントンが関与しているという「ピザゲート」疑惑に着想を得た後、宇宙人から反ワクチンに至るまで多様な陰謀を咀嚼(そしゃく)し、雪だるま式にその全体像を巨大化させていったのだ。

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