秘密結社が裏にいると信じる人が増えている訳

被害妄想的な感受性がコロナ禍で静かに広がる

日本では、アメリカ大統領選をめぐる不正投票説の蔓延がQアノンの浸透を後押しした。日本国内の国政選挙における陰謀論がすでに根付いていたことに一因があると思われる。5~6年ほど前からソーシャルメディアを中心にたびたび言及されるようになった言説で、ムサシ社製の票計測機が自民党の候補者に有利になるよう仕組まれているという疑惑である。

これはムサシ社製品が開票所の票計測機として大きなシェアを占めることが背景にある。このようなローカルな陰謀論がネットコミュニティにある程度定着していたところに、同じく不正投票説を唱える海外の陰謀論が好意的に受け入れられたことは想像にかたくない。

そもそもディープ・ステートは、イギリスに本部を置く影の世界政府のトップ「三百人委員会」(ジョン・コールマン)、あるいはイルミナティやフリーメイソンといった世界征服を企む秘密結社といった系列の現代的なリバイバルにすぎない(以前であれば、ロスチャイルドやロックフェラー、現在ではビル・ゲイツやジョージ・ソロスなどの名前がよく挙がっている)。

コロナ禍で脳の警報装置を起動させるかのように

既存の陰謀論を巧みに取り込みながら、ローカルな陰謀論とも容易に結び付くメカニズムもそれほど目新しいものではないが、コロナ禍で世界各国の経済がダウンし、自粛により心身が過度のストレスにより疲弊し、ネットにかじりつく時間が増大したことで、真偽不明の情報に釣られやすくなっているだけでなく、深入りしてしまう動機づけがかつてないほど強まっているのである。

コロナ禍で陰謀論がメインストリームに急上昇しているのは、未曽有のパンデミックによる混乱ぶりも手伝って、その差し迫った脅威に関するメッセージが、まるで脳の警報装置を起動させるかのように、人々の情動へ効果的に作用したからだ。

進化心理学的に見れば、陰謀論に惹きつけられる発端は、進化の過程で獲得された心のプログラムの誤作動と考えることができる。進化心理学は、人間の心をさまざまな情報を直観的に処理する、複数の「認知モジュール」を備えたシステムととらえる。道に落ちていたヒモをヘビと間違えて身がすくむのは、ヘビを感知するモジュールが反応したとみなすのがわかりやすい例だが、これは太古の昔にわたしたちが生存のために身に付けたものである。

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