コロナ禍を地球の警鐘として利する人への疑念

善と悪の対立構造を作り出す強力な動機付けに

極端な言説には警戒が必要だ(写真:Nastco/iStock)
日本の社会が先行きの見えない不安に覆われている。驚くような事件や事象が次々と巻き起こる一方で、確かなものはますますわからなくなりつつある。わたしたちは間違いなく心休まらない「不安の時代」に生きている。しかもそれは、いつ爆発するかもしれない「不機嫌」を抱えている。そんな混迷の時代の深層に迫る連載第5回。

破壊的な未来像を利用するやからに気をつけよ

コロナ禍になって以降、パンデミック(世界的大流行)に対し、現代文明への警鐘や、自然破壊に対するしっぺ返しという視点から向き合う動きが増えている。確かに、新型コロナウイルスの出現は、地球温暖化や乱開発などを背景に以前から専門家の間では予測されていたものであり、動物から人に感染する危険な人獣共通感染症と出合う確率はかつてないほど高まっている。

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また、ニューノーマルの生活様式が典型的であるが、ウイルス禍ではそれ相応の対策を継続的に実施することが不可欠だ。今後も同様の事態に備えた社会システムの構築だけでなく、価値観のアップデートも急ぐ必要があるのは間違いない。

しかし、ここで注意しなければならないのは極端な言説への警戒だ。「資本主義ではもうダメだ」「今すぐ消費社会を止めなければならない」等々、いたずらに人類の危機をあおりながら大きな転換を求める傾向であり、それは容易に善と悪の対立構造に落とし込まれやすい性質を持っている。

加えて、国家や企業はもとより、宗教などの集団は自らの利益を最大化するために、人々の不安や恐怖を利用する可能性が高いことにも目を向ける必要がある。いわばポピュリズム的な手法である。それこそ破滅的な未来像を強く打ち出すことによって、国家は新しい権力、企業は新しいビジネス、宗教は新しい信者を呼び込もうとする。

認知心理学者のスティーブン・ピンカーは、かつて自分宛てに届いた「温暖化と闘うため真の犠牲を払う」という誓約に皆が署名すべきと訴えた手紙を例に、わたしたちは2つの心理的障害に直面すると述べている(『21世紀の啓蒙 理性、科学、ヒューマニズム、進歩〈上〉』橘明美・坂田雪子訳、草思社)。ちなみにこの手紙では、温室効果ガスの発生を抑えるために「緊急のとき以外、二度と飛行機に乗らないと誓うべき」「宝飾品を買わないと誓うべき」などと書かれていた。

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