コロナ禍を地球の警鐘として利する人への疑念 善と悪の対立構造を作り出す強力な動機付けに

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そういった人々にとってコロナ禍はまるで福音に映るかもしれない。なぜなら、世界的なロックダウン(外出制限)などの取り組みにより、2020年における年間の二酸化炭素(CO2)排出量が7%減少し、第二次世界大戦以来で最も減少したことが明らかになったからだ。
(2020年CO2排出量、コロナ封鎖で過去最大7%減 国際研究/AFP/2020年12月11日)

この場合「道徳感覚」は、コロナをこれまでの人類の行いを罰しにきた自然の化身のようなものと捉え、「もっと犠牲を!(贅沢は敵だ!)」というピューリタン的な価値観を強化しやすい。

一方で富裕層の資産はますます増加する傾向に

だが、実際はといえば、コロナ禍からわずか数カ月で、アメリカの富裕層の資産が5650億ドル(約62兆円)増えており(米富裕層の資産、コロナ禍の3カ月で62兆円増える/CNN/2020年6月5日)、世界で保有資産10億ドル(約1060億円)を超えるビリオネア(超富裕層)の総資産額は昨年過去最高を記録した(コロナ禍、超富裕層の総資産額は過去最高に 7月末で1080兆円/AFP/2020年10月8日)。富の偏在はよりいびつなものになっており、持たざる者へのしわ寄せは限界に達している。

大災害を神の啓示のごときものとして取り扱うことは、権力にすべてを委ねて当局の厳しい取り締まりに快哉(かいさい)を叫ぶ態度と似ていて、「何か超越的なものが悪を浄化してくれる」という無責任な放任となりうる。

さまざまな災害リスクを引き起こす気候危機に際して、わたしたちが従来のライフスタイルを改めなければならないのは事実だが、問題は「犠牲的精神のためではなく効果のためである」ことが重要といえる(よくあるパターンは、技術的な進歩による解決や、エネルギー政策を軽視して、“見た目”の清貧を追求することである)。

そして、何者かの食い物にされないよう慎重に吟味するのが望ましい。コロナ禍で不安や恐怖に引きずられやすいときほど、価値基準を根本的に変えよというメッセージの妥当性と、その発信者の背後にある意図に敏感であることが求められる。変革が必要というメッセージが正しいことと、どのような価値基準を持つべきかということはまったく別だからである。

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