(第58回)人事は大学のキャリア教育をどう評価しているか?

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●人事がキャリア教育を評価している大学

 人事に対し「キャリア教育が優れていると思われる大学」を聞いて、名前が挙がった大学を列挙してみよう。専門学校は除いている。また、選んだ理由が記載されていないものも除去した。

 青山学院大学、秋田大学、大阪商業大学、大阪市立大学、大阪電気通信大学、金沢工業大学、熊本大学、甲南大学、神戸大学、国際教養大学、産業能率大学、上智大学、千葉商科大学、中京大学、帝塚山学院大学、東京工科大学、阪南大学、法政大学、立命館大学、早稲田大学(50音順)

 必ずしも上位校が多いわけではない。大学に足を運んでいる企業が評価する大学という意味で、キャリアセンターや就職担当者への評価だ。特に評価が高いのは立命館大学で、3社が挙げている。「OBのキャリアアドバイザー制度等の導入で、社会人OBと現役学生の接点拡充に注力している」「合同説明会に参加する学生の、業種・業界を問わず積極的に企業の話を聞いてみようとする意識が高い」と熱心な就職支援活動に対し好意的な意見が寄せられている。

●きちんと教育する金沢工業大学と国際教養大学

 金沢工業大学(2社)と国際教養大学(2社)はキャリアセンターというより、カリキュラムそのものが評価されている。
 「キャリア教育と、学校の授業内容が別立てになっているうちは、学生の質は上がらないと思う。国際教養大学のような、教育方針と社会性の融合ができる施策が可能な学校が、本当の意味で『キャリア教育ができている』学校だと思う」。
 「金沢工業大学は、実習等多く取り入れており、学生の学問に対する姿勢も優秀である」。

 金沢工業大学は教育熱心で有名な大学だ。入学時から4年生まで、必修の科目として将来の進路を考えるカリキュラム「社会で自分を活かして生きていく力」を実施している。
 国際教養大学は2010年3月に「カンブリア宮殿(テレビ東京)」で取り上げられて一気に知名度が上がった。秋田の大学だが、「英語の授業をするのではなく英語で授業」「就職率はほぼ100%」「寮では留学生と同じ建物内に住む」「1年間の海外留学が卒業要件」。
 日本の多くの学生は、入学さえすればほぼ自動的に卒業できるが、国際教養大学は違う。ちゃんと履修しないと卒業できない。2004年入学の第1期生が4年で卒業した率は45%にすぎない。カリキュラムの厳しさから留年率が極めて高い。
 日本にこういう大学はほとんどないが、世界の高等教育では常識である。

●人事が大学に求めるのは人間としてのモラルを持つ学生の育成

図表1【採用担当者として大学に求めるもの】

 採用担当者が大学に求めるものを聞いたところ、圧倒的に多いのは「学生のコミュニケーション能力の向上」と「学生の基礎学力の向上」だった。「インターンシップの拡大」や「面接、適性検査、選考テストの指導」などの採用に直結する項目は意外なほど少ない。

 人事担当者のフリーコメントの一部を紹介してみよう。

・基本的マナーの向上
・キャリアに限定せず、人として立派になるような教育。
・自分で考える力
・自分と他者との違いの理解
・積極性
・視野を広げる
・失敗を恐れない
・人として最低限のモラル
・世の中の現実を的確に伝えて理解させること
・教養
・世の中(仕事ではない)につながる授業
・周囲との関係性を意識する力の向上
・自主性
・思考力の醸成
・メンタル面のサポート
・キャリアデザインを自分で考えること
・社会人としての一般常識
・心の持ち方や姿勢についての教育
・日本の各職業とその役割・期待の勉強
・英語力
・学生生活を通して、人として大切なものを見つけられる手助け。

 これらのコメントを読むと、今どきの学生に欠けているものが理解できる。

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