「使い捨て」をやめて手に入れた「王侯貴族的生活」 「今あるもの」でいつまで生きられるのか?

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で、結論から申し上げる。

これをやりだしたらですね、もうまったく「捨てる」というタイミングがいつまでたっても訪れないことに驚かずにはいられないのであった。毎日使っているわが鍋の底も、表面は剥がれてきているが穴が開くとなれば多分50年後くらい先な感じである。その時、私はもう生きていない可能性が高い。

ことほど左様に、わが身の回りのほとんどのものは、どう考えても死ぬまで使い続けるに違いないということがたちまち判明したのであります。

それほどまでに、ものを「使い切る」のは大変なことなのである。ほぼ不可能なプロジェクトと言ってもいい。

例えば、棚やベッドやちゃぶ台などの家具はもう絶対死ぬまで添い遂げること確定だし、台所の調理道具類、鍋、包丁も然り。箸や皿などの食器類も同様である。着るものは日々着まくっていればボロボロになってはくるが、それでも修理しながら着ていけば10年20年は軽くもちそうである。

今あるものと生涯をともに過ごす

ってことは、私はこの、ワンルームの部屋で今見えているすべてのものと、おそらく生涯をともに過ごすのだ、つまりは、もう生涯これらのものを「買う」必要はまったくないのだということに気づかざるをえないのであった。

もちろん、どうしても消耗してしまうものもある。

例えば食器を拭く布巾。長く使っていれば汚れがひどくなってくるので、そうなったら折りたたんでチクチク手縫いをして雑巾にする。しかしこの雑巾が非常に丈夫で、多少破れたところで例の「パン屋方式」で言えばまだまだ十分使えるので、2年ほど経ってようやく「使い切り」に成功してお役御免となる。ってことは、ここから逆算して新しい布巾をおろすのは2年に1度。消耗と言っても誠に気の長い話である。

例えばタオル。私が常時所有するタオルはフェイスタオル1枚で、顔を拭き手を拭き最後は銭湯で体を洗い体を拭いて、洗濯して干して翌日また使うという方式を採用しているのだが、ここまでやっても半年~1年は余裕でもつ。現代のタオルとは誠に丈夫にできているのであり、使い切るのは本当に大変なことなんである。

つまりはこれがどういうことかと言いますと、たとえ100年生きることになったとしても、これから私が生きていくために買わなきゃいけないものなんて本当に少ない、っていうか、ほとんどないんだってことが具体的にわからずにはいられないのである。

ってことで、私が今後買わなきゃいけない物リストは以下の通りであることが判明した。

・食材(1日約500円)
・カセットコンロ用ガスボンベ(1週間に100円)
・掃除用のクエン酸と重曹(1年に約1000円)
・洗濯用の石鹸(1年に約1000円)
・美容用ゴマ油(1カ月に約500円)
・マッチ(1年に約200円)
・火鉢用の炭(1年に約1500円)
・下着や靴下など(1年に約2万円)

以上である。すべてをならしてひと月あたりに計算し直すと、約2万円であることがわかった。

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