黒い影と自転車
星空の下、制服、制帽の男がライトをつけて自転車をこいでいく。黒い影が不穏な雰囲気を醸し出す。この作品は『カリガリ博士』や『プラーグの大学生』など、ドイツ表現主義の映画の影響を受けていると滝沢さんは見る。表現主義とは、外見を表現する印象派に対して、不安などの感情を表そうとするものだ。
「谷中は映画が好きでした。映画はセットで撮影すると、照明によって影を強調し、歪んだ空間を作り出せる。そういうところに刺激を受けたのではないでしょうか」
谷中の作品は1930年代のモダンな空気をまといながらも、東洋的な感じのするものが多い。長谷寺の門前町に生まれ、子供時代を寺で過ごしたためだろうか。
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