終戦の翌年に餓死…鬼才の木版画を見に行く 不穏で幻想的。谷中安規の魅力

✎ 1〜 ✎ 41 ✎ 42 ✎ 43 ✎ 最新
拡大
縮小

黒い影と自転車

画像を拡大
谷中安規『自転車A』1932年

星空の下、制服、制帽の男がライトをつけて自転車をこいでいく。黒い影が不穏な雰囲気を醸し出す。この作品は『カリガリ博士』や『プラーグの大学生』など、ドイツ表現主義の映画の影響を受けていると滝沢さんは見る。表現主義とは、外見を表現する印象派に対して、不安などの感情を表そうとするものだ。

「谷中は映画が好きでした。映画はセットで撮影すると、照明によって影を強調し、歪んだ空間を作り出せる。そういうところに刺激を受けたのではないでしょうか」

谷中の作品は1930年代のモダンな空気をまといながらも、東洋的な感じのするものが多い。長谷寺の門前町に生まれ、子供時代を寺で過ごしたためだろうか。

次ページ戦時中に見出す、桃源郷
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT