9月13日、京都国立博物館に新たな展示館、「平成知新館」がオープンした。設計は、ニューヨーク近代美術館新館を手掛けた建築家の谷口吉生。11月16日まで開催中のオープン記念展「京へのいざない」では、京都国立博物館の誇るお宝が公開されている。そこから研究員おすすめの4点を見てみよう。
リアルに見せるテクニック
京都府の北部、日本海に臨む天橋立は、白砂の浜に松林が連なり、松島、厳島とともに日本三景に数えられている。室町時代の画僧雪舟(せっしゅう)は、晩年、この風景を『天橋立図』に描いた。横幅が170センチ近くある大作で、日本の水墨画の傑作とされる。
「リアルに見せるために、風景をそのまま写すのではなく、いろいろな変更を加えています」と、山本英男上席研究員は語る。
たとえば、町並みを長く引き延ばし、右手の山をぐんと高くして、山水画として納まりのいい構図にしている。さらに上空1000メートルという、ありえない視点から描かれている。実際には、この景色を俯瞰できる山はないのだ。
「雪舟は土地の人の案内であちこち歩いてスケッチし、それを組み合わせて想像して描いたのだと思います。これだけの絵を制作するには、かなり長く滞在したのでしょう」
当時の絵師は注文を受けて絵を描いたが、『天橋立図』の注文主はわかっていない。地元の有力者、雪舟のパトロンだった山口の大内氏、あるい大内家の家臣の益田氏という説もある。
実は『天橋立図』は、本当の作品を描く前の下絵だったという。
「よく見ると20枚ほどの紙が継ぎ合わされています。最近になって、シワのよった粗末な紙に描かれたことがわかりました。シワのあったところに墨だまりができているのです。しかも、建物を塗った朱色が乾き切らないうちに折りたたまれたらしく、反対側に朱が写っています。大きいから邪魔になって折ったのでしょう」
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