人気! 人間国宝の茶碗で抹茶が飲める美術館 入館数毎年5%増! 究極の「お客様志向」を発揮

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 モノがあふれている社会で、売り手はいかにしてモノを売るか。そして、モノに囲まれている私たち買い手が、モノを買う理由とは何なのか。マザーハウス副社長の山崎大祐が、これからの時代の「モノの買い方、売り方」を考えていく。

 

「美術館こそ、ビジネス思考、そして、お客様志向がないとダメです」

「人間国宝美術館」の館主、山口伸廣さんは言います。人間国宝美術館は、湯河原にある民間の美術館で、人間国宝(重要無形文化財保持者)の美術品を中心としたコレクションを1000点以上も保有する美術館です。

とはいえ、駅から歩いて10分以上の地方の小さな美術館が、2007年の開館以来、入場者数を毎年5%以上、増やしているのはなぜでしょうか?

モノにあふれ、機能にあふれた時代、デザイン思考、そしてクリエーティブの必要性が多くの場所で議論されています。私が働いているマザーハウスでは、スタッフが訪れた美術館の入場料を月4回まで全額負担するという福利厚生をしていますが、それはクリエーティブのヒントを与えてくれるだろう場所が、美術館であると信じているからです。

しかし、そんな美術館自体がクリエーティブで新しいアクションをとっているだろうか? そんな疑問を持っている中で、人間国宝美術館が行っている面白い試みを今回は紹介したいと思います。

人間国宝美術館の外観

美術館の数は増え続けている

文部科学省の統計によると、2011年度の全国の美術館数は1087で、この美術館数を都道府県数で割ると、1県当たり23館もの美術館がある計算です。さらに、この美術館数は、15年前と比べて約30%も伸びています。

確かに、日本人は美術展によく足を運び、毎年の世界の調査でも日本の美術展入場者数は世界トップレベルにあります。

しかし、それは一部の大規模な美術館の美術展に人が集中している結果です。2007年に森ビルが調査した結果によると、1年間で美術館に1度でも行く人の割合は75.7%、頻度は1年にわずか1.9回と、ニューヨークやパリなどの世界主要都市と比べて、低い結果となっています。この数字から考えると、地方の小さな美術館などでは経営環境は厳しくなってきており、競争は激化していると考えるべきでしょう。

「ビジネスとして美術館を考えたとき、単体で利益が出ている美術館はほとんどないと思います。公立美術館は補助金をベースにしていて、採算度外視でやっているところが多く、自治体の財政を圧迫するようなケースも出てきています。また、私立美術館も、多くの場合は企業が本業とは別に運営しているわけですが、企業経営が厳しくなったときに、真っ先に処分の対象になるのが美術館です。そうなってくると、美術館自体がビジネスとして成り立っているのかどうかが大事なのです」

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