エンジニアが老舗旅館とトトロの木を救う 旅館再生物語から生まれた新しいビジネス

✎ 1〜 ✎ 18 ✎ 19 ✎ 20 ✎ 21
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
 モノがあふれている社会で、売り手はいかにしてモノを売るか。そして、モノに囲まれている私たち買い手が、モノを買う理由とは何なのか。マザーハウス副社長の山崎大祐が、これからの時代の「モノの買い方、売り方」を考えていく。
宮﨑富夫さんをお呼びしたマザーハウスカレッジの様子。旅館業界についても熱い議論が行われた

「私には選択肢がなかったのです。ホンダの給与では、実家の旅館の借金は返せない。旅館経営の経験なんてまったくなかったのですが、後を継ぐしかありませんでした」

鶴巻温泉の老舗旅館・元湯陣屋を経営する陣屋代表取締役社長、宮﨑富夫さんは言います。経営難で身売り寸前まで行った老舗旅館を、まったくの異業種から来た経営者が立て直し、そしてその改革が業界全体に広がっていく。

今回、ご紹介する話は、そんなビジネス小説のようなお話です。そしてこれは、以前この連載でもご紹介した「日本の伝統工芸を改革するイギリス金融マン」同様、コンサバティブな業界こそ、業界未経験でバッググラウンドの異なる、いわゆる「異端」が活躍する可能性を示すものでもあります。

廃業寸前の老舗旅館を立て直した

今回、ご紹介する老舗旅館・元湯陣屋を聞いたことがあるという方もいるかもしれません。この元湯陣屋は、映画監督の宮崎駿さんの親戚が経営していたため、宮崎駿さんが幼少期によく遊んだ庭があり、作品作りにも影響を与えたと言われています。実際、その庭にはトトロのモチーフになったとされる「トトロの木」もあるのです。

次ページパソコンを使える人が1人しかいなかった
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事