「私には選択肢がなかったのです。ホンダの給与では、実家の旅館の借金は返せない。旅館経営の経験なんてまったくなかったのですが、後を継ぐしかありませんでした」
鶴巻温泉の老舗旅館・元湯陣屋を経営する陣屋代表取締役社長、宮﨑富夫さんは言います。経営難で身売り寸前まで行った老舗旅館を、まったくの異業種から来た経営者が立て直し、そしてその改革が業界全体に広がっていく。
今回、ご紹介する話は、そんなビジネス小説のようなお話です。そしてこれは、以前この連載でもご紹介した「日本の伝統工芸を改革するイギリス金融マン」同様、コンサバティブな業界こそ、業界未経験でバッググラウンドの異なる、いわゆる「異端」が活躍する可能性を示すものでもあります。
廃業寸前の老舗旅館を立て直した
今回、ご紹介する老舗旅館・元湯陣屋を聞いたことがあるという方もいるかもしれません。この元湯陣屋は、映画監督の宮崎駿さんの親戚が経営していたため、宮崎駿さんが幼少期によく遊んだ庭があり、作品作りにも影響を与えたと言われています。実際、その庭にはトトロのモチーフになったとされる「トトロの木」もあるのです。
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