クールじゃない!「サーモンだけ回転寿司」 “クールジャパン”が大変なことに…【後編】

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 モノがあふれている社会で、売り手はいかにしてモノを売るか。そして、モノに囲まれている私たち買い手が、モノを買う理由とは何なのか。マザーハウス副社長の山崎大祐が、これからの時代の「モノの買い方、売り方」を考えていく。

  ※前編「クールジャパン、世界で戦うために必要なこと」はこちら。

アニメや漫画、寿司などの日本食、ストリートファッションなどの「クールジャパン」コンテンツをビジネスとして世界に広げるべく、長い期間をかけて投資を行っていく「クールジャパン機構」。前編では、クールジャパン機構の存在意義について触れましたが、そこで「どこまで本気で世界市場で勝負したいと思っているのか?」「世界市場で勝負できるものがあるのか?」というふたつの疑問が湧いてきました。

今週は「クールジャパン」を通して、日本のモノが海外で勝負していくうえで必要なことを明らかにしていきます。そもそも「クールジャパン」は、どこまで本気で世界を相手にビジネスをしたいと思っているのでしょうか?

どこまで本気で海外展開を考えているのか

確かに日本市場が縮小し、将来的にも拡大する期待が薄い中で、海外市場に対する興味関心は高まっていると言えます。しかしながら、「クールジャパン」をビジネス的に担っている人たちが、どこまで本気で海外展開を考えているのかという疑問もあります。クールジャパン機構の太田社長はそんな声に対して、異を唱えます。

「世界に出ていきたい人たちはたくさんいますよ。特にキャラクターグッズやアニメ、漫画など、すでに海外で流通しているコンテンツの本家本元は悔しい思いもしています。海賊版にやられっぱなしですから。でも偽物が出回っている理由も、実は日本にあるのです。出ていかなければやられるだけです。ただ、単独でやるにはおカネがない、力がない、だから一緒にやらないとダメなのです」

文化庁が2013年に中国の北京、上海、広州、重慶の4都市で行った調査でも、日本のアニメや漫画の海賊版による年間損失額は約5600億円となっており、これを基に推計すると、中国内での年間損失額は約3兆8200億円にも上るとされています。

すべての海賊版を駆逐するのは難しいとしても、「本家本元」にしてみれば、大きなビジネスチャンスが世界のマーケットに広がっていることは間違いありません。

クールジャパン機構が2014年4月に発表した投資検討案件のひとつが、シンガポールなどでのジャパンフードタウン事業(写真は現在のプラン)。一つひとつのコンテンツは小さくても、まとめることで価値が生まれるプラットフォームを作ることも目的にある

「それ以外にも、たとえば和食。寿司屋はパリだけで1200軒ある。でも多くは、これって寿司?ってものでしょう。日本人が展開しているものが少ないからです。当然、日本の料理人は悔しい思いをしていますよ。ファッションの世界でも、パリコレを見れば世界のデザイナーランキングトップ10に入るブランドのほとんどは、日本製の生地を使っていて、全生地の7割が日本製生地の超人気ブランドもある。でも、われわれ日本人も含めて、世界の消費者はほとんどその事実を知りません。世界のビジネスでもっと『ジャパン』を見せることはできるはずなのです」

確かに寿司に関しては、私も世界で悔しい思いをたくさんしてきました。ここ1年間で、パリやリオデジャネイロ、ドバイ、台湾で人気の回転寿司屋を訪れてみましたが、台湾を除くとまともな回転寿司ではありませんでした。それは、現地の文化に合わせたビジネスの展開の仕方、いわゆるローカライズというレベルではなく、色が変わったマグロが1皿500円で提供されていたり、回っているものの8割がサーモンの寿司だったり、ビジネスのクオリティがとても低レベルなものです。

同時に、日本食という「良品質」「ヘルシー」のイメージがビジネスとして利用され、クオリティと見合わない価格で提供されていることに、ビジネスチャンスがあると感じました。

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