クールじゃない!「サーモンだけ回転寿司」 “クールジャパン”が大変なことに…【後編】

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しかしながら現在、世界で最もグローバル展開をしている回転寿司チェーンはイギリスの会社であるという事実が、「クールジャパン」とビジネスがつながっていない現実をよく示しているでしょう。

ブラジル・リオデジャネイロの人気回転寿司店。見渡すかぎり、ほぼサーモンしか回っていない

そういう現実こそが「クールジャパン」のいちばんのビジネスチャンスであると言えますが、そもそもそれをビジネスチャンスとしてとらえ、実行できるかどうかは、担い手自身にビジネスと向き合う覚悟が必要で、悔しさだけではダメです。

「クールジャパン機構は補助金をくれるところ、と勘違いしている方もまだ多くいます。あくまで投資ファンドですから、ビジネスで成功してリターンを返さないといけないのですよ、ということがまだまだ伝わってない。自分のプロダクトが世界のマーケットに並んだら満足……ではなくて、売って収益を上げて帰ってくるのだという人に、クールジャパン機構の門をたたいてほしい」

実際にクールジャパン機構に持ち込まれる案件でも、ビジネスとしての覚悟を持ち切れていないものがたくさんあると太田さんは言います。もともと、海外進出支援の補助金が用意されてきた背景もあり、ビジネスとしての結果を求められることを理解してもらうには、時間がかかるのかもしれません。

「クールジャパン」が足りないことは何か?

では「クールジャパン」プロダクトがビジネスとして成功するために、足りないものは何でしょうか? ビジネスに必要な要素である「ヒト」「モノ」「カネ」のうち、カネはクールジャパン機構が提供できたとしても、「ヒト」と「モノ」にはそれぞれ課題がありそうです。

前回の連載では、クールジャパン機構の中心人材となるような、金融とリアルビジネスの懸け橋となり、さらにグローバル感覚を兼ね備えた人材が不足していることは書きました。しかしそれだけでなく、投資先、すなわち実際のビジネス側にも人材は不足しています。特に「クールジャパン」を担うアニメや漫画、ファッションや和食などは職人的な世界であり、この職人的な世界とビジネスを横断的に行き来できる経営者が不足しているのです。

「日本のマネジメントは管理能力や説明能力がある左脳的な人が評価されてきました。しかし、日本経済は成熟し、新しいモノを生み出す、もしくは新しいモノをビジネスに変えていくことが必要とされている今、これからのマネジメントは右脳と左脳、両方が必要です。最近ではクリエイティブや職人的世界に対する理解がある右脳的な経営者が少ないと感じます。もともと、ホンダやソニーなど、大きくなった企業にはそういう経営者がいたのです。一芸に秀でていて、マネジメントもできる。そもそも教育にも問題があるのですが、そういうマネジメント層がもっといたらと感じます」

これは「クールジャパン」特有の問題でなく、多くの企業で「クリエイティブ」や「イノベーション」というキーワードが叫ばれていることからしても、日本企業全体の課題であると言えるでしょう。

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