26歳、女性経営者が魂を吹き込む伝統産業 「使い手目線」が改革の武器

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 モノがあふれている社会で、売り手はいかにしてモノを売るか。そして、モノに囲まれている私たち買い手が、モノを買う理由とは何なのか。マザーハウス副社長の山崎大祐が、これからの時代の「モノの買い方、売り方」を考えていく。 
矢島里佳さんをお呼びしたマザーハウスカレッジ

「お気に入りの伝統工芸品を持っている、もしくは、伝統工芸品で欲しいものがある人はいますか?」

この質問に対して、会場から手が挙がったのは、全体の2割もいませんでした。先日、開催したマザーハウスカレッジ、伝統工芸をテーマにした会でのひとコマです。お客様は伝統工芸に興味がある方々がほとんどであったにもかかわらず、この状態なのです。これは今の伝統工芸の世界を如実に表している現実と言えます。

前回の「日本の伝統工芸を改革するイギリス人金融マン」の中では、伝統工芸であっても社会に必要とされなければ、やるべきことをやらずにただ作るだけでは、消えていくだろうと述べました。

今、伝統工芸で必要なのは、守っていくことを目的にするのではなく、「伝統工芸品で欲しいものがあるか」という質問に対して、多くの人の手が挙がるような状況を作ることにあります。その売れる伝統工芸品を作るために欠かせないのが、若い力、そして女性の力です。

今回ご紹介したいのは、株式会社和えるの代表取締役、矢島里佳さんのお話です。今の伝統工芸界に必要なヒントがあふれています。

若い女性だからこそのチャンスがある

初の直営店「aeru meguro」(東京・目黒)。全商品が手に取れるだけでなく、多くのイベントも開かれる

矢島さんは2011年の東日本大震災の直後に、「子どもたちに日本の伝統をつなぐ」というビジョンで、和えるを立ち上げました。当時はまだ22歳。そこから数々の困難を乗り越えて、0~6歳児向けの商品を作る自社ブランド「aeru」を立ち上げ、今年7月には東京・目黒に第1号店「aeru meguro」をオープンさせています。 

「私たちは伝統工芸ではなく、伝統産業を作っていきたいのです。工芸というと、美術館の一品ものなどをイメージしますが、そうではなく、日常的に使えるものを作っていきたい。たとえば、漆器。漆器は使い込んでこそ、つやが増し、美しくなっていきます。それが手仕事のよさなのに、私たちは使い込んでいないから、それを体感できていないのです」

矢島さんは、私たちの生活の中に伝統工芸品があまりにも少なく、その価値を体感する機会がないことが問題であると言います。そして、その入口を作るには、まずはお客様の手に取ってもらえるような商品を作る必要があります。伝統工芸はホーム雑貨やキッチン用品、ファッション製品が多く、本来であれば女性がターゲットになるものが多いはずです。

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