昨秋、英国の画家フランシス・ベーコンの作品がオークションにかけられ、オークションで売られた美術品では最高額とされる、約141億円で落札されて話題になった。いったい美術品の値段は何で決まるのだろうか?
東京国立近代美術館で8月24日まで開催中の「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより」は、作品を楽しみながら、そんなことも考えさせてくれる展覧会だ。企画した主任研究員の保坂健二朗さんに話をきいた。
美術品の価値を決める、3つの要素
美術品の値段を決めるのは、「美的な価値」×「稀少性」×「需要と供給のバランス」の3つが基本だという。
「ただ、美的な価値は文化圏によっても違い、あやふやなところがありますから、稀少性と需給バランスの2つが大きな役割を果たすことになります。そうした観点からすると、実は美的な価値は、価格に関してはあまり重要ではないともいえるのです」
と保坂さん。つまり、必ずしも高い絵=いい絵ということにはならないわけだ。
ここで作品の売買の流れを見てみよう。いわゆる現代美術の場合、通常、著名なアーティストには画廊がついている。作品は基本的にその画廊を通じて市場に姿を現す。そしてコレクターや美術館が購入する。
コレクターは一度買った作品を手放すことがある。好みが変わることもあるし、今あるものを売って、もっと欲しい作品を買うこともあるからだ。そういうときは、オークションというオープンな場所に作品が出品され、取引されることがある。
「オークションは欲望と欲望がぶつかり合う場です。欲しい人が多ければ価格は上がり、何十億円で落札というニュースにもなりやすい。でも、より高いほうがよりよい作品というわけでは必ずしもありません。この展覧会では、価格と美的な価値は実はそれほど明確な関係がないことを実感してもらいたいのです」と保坂さんは語る。
では、作品をいくつか見てみよう。
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