なぜ日本人はチャイナドレスが好きか?

大戦前の複雑な心境が生んだミステリー

チャイナドレスを着た女性の絵を集めた「描かれたチャイナドレス」展が、7月21日までブリヂストン美術館で開かれている。チャイナドレスというと、深いスリットの入ったセクシーな姿を想像してしまいがちだが、ここにはもっと多彩な中国服が登場する。いずれも1910年代から40年代にかけて描かれた、日本人画家による油絵だ。学芸員の貝塚健さんの解説で出品作を見てみよう。

横顔が美しい、数少ない日本人?

藤島武二『女の横顔』1926~27年 
油彩・板 ポーラ美術館蔵

『女の横顔』は整った顔立ちもさることながら、鮮やかな中国服に目が引き付けられる。作者の藤島武二は女性の中国服を熱心に集めていた。

「おそらく横浜の中華街を中心に集めたのではないかと推測していますが、当時、奉天(現在の中国の瀋陽)で医師をしていた木下杢太郎に、細かく色やデザインを指定して、購入を依頼した手紙も残っています。藤島は50~60着集めたと語っています」と貝塚さん。そして、集めた中国服を日本人女性に着せて横顔を描いた。

実は、彼は留学先のヨーロッパで、同じような構図の女性像を見ていたという。

「藤島はイタリア・ルネサンス期の真横から描く女性像にたいへん感銘を受けています。非常に熱心に見たと自分自身で書き残しています。それから10年以上経ってから、突然、中国服を日本人モデルに着せて描き始めるんですね」

ところで、この絵のモデルは佐々木カ子ヨ(かねよ)。竹久夢二のモデルで、一緒に暮らしていたこともある女性だ。夢二と別れたあとに藤島のモデルになった。

「藤島は、日本の女の横顔に美しいのがない、とこぼしています。おそらく彼女は、藤島のたいへん厳しい好みにかなったモデルのひとりだったのだと思います」

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