中国「空気と水」の汚染が止まらない 富坂聰氏が描き出す衝撃の現地レポート(前編)
PM2.5と発がん性の関係が明らかに
中国東北部で暖房が解禁された10月下旬、各家庭で一斉に石炭が燃やされたことで東北三省の大気の状況は一気に悪化した。
国営新華社通信は、現地からの報道として昼間だというのに真っ暗になった街の写真を〈『ママ、今日は世界の終わりの日なの?』と子供が訊ねた〉という大きな見出しを付けて伝えたほどだった。
ハルビン市では、一時PM2.5の濃度が1立方メートル当たり595マイクログラムにも達し、「散歩で自分が連れている犬の姿が見えなかった」などといったジョークまで飛び交ったという。大気汚染の深刻な状況が伝わる話には枚挙にいとまがない。
PM2.5に代表される中国の大気汚染の問題は、『Voice』(2013年5月号)でもすでに報告したとおりだ。だが、今冬には例年にないほど濃度も規模も深刻な汚染になるのではないかと心配されるようになっているのだ。
通常、PM2.5の問題は気象条件などの影響で真冬から春先にかけて深刻化するものだが、2013年にはこれが秋の時点ですでに中国各地で高い濃度を観測するようになっていたからだった。
この事情は、上海に次いで日本人が多く暮らす北京で顕著だった。
「北京に暮らす日本人のあいだでは、あいさつ代わりにPM2.5の話をします」と教えてくれたのは全国紙の北京特派員である。北京中心部の喫茶店でおもむろにポケットからスマートフォンを取り出すと、濃度測定のアプリを開いて画面を見せながら話を続けた。