オークションで作品に高値がつくなど、今、海外でも1960年代の日本の前衛美術が注目されている。その中心人物の一人、赤瀬川原平さん(1937~2014年)の回顧展「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」が、12月23日まで千葉市美術館で開かれている。
赤瀬川さんは、絵画、オブジェ、マンガ、小説、エッセイ、路上観察など、次々にジャンルを変えながら、常識とは違うモノの見方を提示してきた。笑いを誘うユーモラスなものも多く、物忘れなどの老化現象をポジティブにとらえ直した『老人力』(1998年)はベストセラーになった。会田誠、山口晃ら、現代のアーティストからも敬愛されている赤瀬川さんについて、展覧会を企画した水沼啓和主任学芸員に話をきいた。
廃品タイヤの肉感
赤瀬川さんの出世作は、24歳のとき読売アンデパンダン展に出品した『ヴァギナのシーツ(二番目のプレゼント)』だった。肉体を思わせる赤い部分はタイヤのゴムチューブ。そこにホイールや真空管が取り付けられている。
「当時、ハイテクだった真空管と生々しい肉体、つまり、無機的なものと有機的なものが組み合わされています。このようなオブジェの作品は、まだ新しいものでした」と水沼さんは語る。欧米はすでに大量生産、大量消費の時代に入っていた。
「それを受けてゴミや廃品を使うジャンクアートが世界的にはやっていました。日本の若い芸術家にとっては、流行に乗るという意味もありましたが、四畳半に住み、おカネのない中で目立つ作品を作るためには、廃品を使うことがメリットとなったのです」
廃品を集めてオブジェを作り、展覧会が終わると捨ててしまう。だから当時の出品作はほとんど残っていないという。この「ヴァギナのシーツ」も、1994年に再制作されたものだ。
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