激しかった「前衛芸術」赤瀬川原平を再び 絵画、オブジェ、小説、路上観察まで変幻自在

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無用の長物

赤瀬川原平『トマソン黙示録 真空の踊り場・四谷階段』1988年 大分市美術館蔵

たとえば、写真の階段は上ったら下りるしかない。「不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物」を「トマソン」と呼び、86年からは藤森照信、林丈二、松田哲夫、南伸坊ら、路上観察学会のメンバーと街を歩いて写真を撮った。そこから中古カメラの収集にはまり、1992年には秋山祐徳太子、高梨豊との写真グループ「ライカ同盟」が生まれている。

「赤瀬川さんはひとつの分野で5年ぐらいの短期間に成功し、そのあと衰退期に入り、また次の活動でバーッと走って成功して、という波を繰り返しました。普通の人は一度の波で終わってしまいますが、次々と波が来たのです」

バラバラなことをやっているようでいて、初期から晩年まで、考え方はブレていなかったと水沼さんは言う。

「身の周りにあるものを観察し、視点をズラしたり、組み合わせたりして作品を作る。それは一貫しています。廃品でオブジェを作り、路上でトマソンを見つけて撮影する。身近な素材が面白いものに生まれ変わっています。若い頃からやり方を変えずに、これほど多くの分野を自由に渡り歩いた人はいないと思います」

病気療養中だった赤瀬川さんは、展覧会が始まる2日前に77歳で亡くなった。展示室には約550点の作品と資料が並び、活動が丁寧に紹介されている。半世紀の軌跡は、凝り固まった頭を柔らかくほぐしてくれる。

「赤瀬川原平の芸術原論 1960年代から現在まで」
2014年10月28日~12月23日
千葉市美術館
千葉市中央区中央3-10-8
10:00~18:00(金・土曜は20:00まで、入館は閉館の30分前まで)
無休
一般1000円、大学生700円、小・中学生、高校生無料
12月13日(土)14:00、水沼啓和主任学芸員による講座「赤瀬川原平交遊録-1960年代を中心に」(先着150人、無料)
2015年1月7日~2月22日に大分市美術館、3月21日~5月31日に広島市現代美術館に巡回予定

 

仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

電機メーカー勤務、秘書などを経てライターに。ラジオ、アート、本などの記事や人物ルポを執筆

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